この怖い話は約 3 分で読めます。

921 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/08/10(土) 00:46:08.72 ID:vEToq2Ko0
いけないって分かってたんだけど、私達は海に向かってロケット花火を打つことにしたのね。
今は、本当にそんなことしなければよかったって思ってる。あれがすごくいけないことだったってことも。

ひゅーんって音を立てながら、海に向かって、1本の光の矢が進んで、それから消えてく。
ひゅーんって飛んでくロケット花火を目で追って、海を見つめてるとね、真っ暗な海面に、何かが見えたんだ。
その瞬間、誰も言葉を発しなくなったから、たぶん全員が気付いてたんだと思う。みんな横1列に並だままで、ただ波の音が響いてた。
そこにいたのは、ヒロコちゃんだった。
彼女は仰向けになって、波の動きに合わせてふわふわと浮いてた。
おかしいんだよ、けっこう遠くて、しかも真っ暗だったのに。見えるわけなんてないの。そもそもそれが人であることすら、分かる筈なんてない。
でも、なんでか全員分かってるみたいだった。私達の誰ひとり、そんな彼女を見ても叫び声ひとつあげなかった。
誰も目を逸らさない。ただひたすら、浮かんでる彼女を見てた。

924 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/08/10(土) 01:11:55.47 ID:vEToq2Ko0

次の日、私達は担任の先生に彼女が行方不明になったって聞いた。
後で知ったんだけど、一緒に花火をした全員が、昨日の花火に彼女が来ることを親に内緒にしてたんだって。
私達は、あのことを他の誰かに話すこともなかったし、内輪で話題にすることもほぼなかった。
すごく怖かったし、何故か絶対に口にしちゃいけない雰囲気だった。
そして彼女が見つかることがないまま夏休みになって、2学期が始まると、元々大人しかった彼女がいないことを気にする人は誰もいなくなってた。

ママ達の噂では、彼女のお父さんがどうかしちゃったんじゃないかってことになってるけど、本当の所は分からない。
あの時花火に参加してて、クラス会に参加してたのは、私ともう1人だけだった。
酔っぱらったその子が、泣きそうな声で呟いた言葉がとても印象的だった。
「自分で、海に入っていったんだよ。みんなが、帰れって言ったらさ、ヒロコちゃん、自分で。」

今でも思い出す。波にゆらゆら揺れる彼女と、彼女を見つめる、皆の真剣な目。たぶん一生忘れられないと思う。
暑い夏の出来事。

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