この怖い話は約 3 分で読めます。

怖いというか不思議な体験したのでこっそり置いてみる。

当時おもちゃ屋(大人のではない)勤務で、その日私は休みだった。
夜に店の後輩社員から電話があり、何かトラブルでもあったのかと慌てて電話に出た。
すると開口一番「大変っす!」と叫ぶ後輩。

後輩「髪が伸びてます!」

どうやら人形の髪が伸びているらしい。
人形と言ってもよく聞く日本人形の類ではなく、安っぽい、ビニール製の寝かせると目を閉じるようなものだ。
大きさは40㎝くらいで、リカちゃん人形を大きくしたようなタイプ。
後輩は元々ふざけるのが好きな性格だったので、また冗談かと思っていた。
なのでどのくらい伸びたのか私も冗談まじりで聞いてみたのだが。

後輩「もうかれこれ5㎝は伸びてるっすよ!」

何やら文法に違和感を覚えた。かれこれって何だ、かれこれって。
まるで今も伸び続けているように聞こえるじゃないかと笑う私に、後輩はその通りなんだと主張する。
本当にリアルタイムで伸びているのだと。そんな馬鹿な。
しかし後輩は叫び続ける。

後輩「そろそろ(人形の)目が隠れそうっすよ~!…あ、もう隠れました!」

折角の休みなのに何故こんな珍妙な実況を聞かなくてはならないのか。
冗談にしてももっとハイセンスなものを、と少し苛々した。
けれど後輩は必死で店に来てくれと頼んでくる。
店内に一人しかいなくて怖いが人形も気になるから帰れないと言うのだ。
仕方なしに私は通話はそのままで店に向かった。
その間も実況は続く。髪はとうとう鼻まで覆ったらしい。

私が店に着くと、後輩が駆け寄ってきた。
185cmの大男が人形を抱いて走ってくる姿に正直ドン引きした。
そんな私には構う事なく、後輩は涙目で人形を見せてきた。

私は絶句した。
本当に人形の前髪だけが口の辺りまで伸びていたのだ。
既に髪の成長は止まっていたが、十分不気味だった。
何となく長さを測ってみると10cm弱伸びていた。

明らかに不自然な状況だと理解していたものの、後輩も私も対処法が分からず、
とりあえず人形を店に放置して帰ることにした。
後輩は何を思ったのか交通安全のお守りを人形の隣に置いていた。

次の日上司に連絡して、その人形は上司の手に委ねられた。
後日、人形供養とやらをしている寺に預けられたとのこと。
本当に曰くつきだったのか分からないが、不良品としてメーカーに返品されるよりは良い結果だろう。

あの人形は一体何だったのかと今でも不思議に思う。
生憎、後輩も私も霊感等は無いので真相は分からず終いだ。
ただ後輩にはトラウマだったらしく、あれから5年経った今でも人形が怖くて仕方ないようだ。
お互い別の仕事に就いているが彼は時折夢に見るらしく、何度も夜中に電話で起こされた。
夢の中ではあの人形がどういう訳か「勝訴」と書かれた紙を見せてくるそうだ。

数十分前も後輩から電話があった。また例の夢を見たらしい。
これから後輩が家に来る。恐らく私の少ない夏休みは後輩に潰されるだろう。

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