この怖い話は約 2 分で読めます。

頭の皮から爪先まで、皮膚が真っ黒になってはげて行く。
溶連菌感染症、それが私の病気の名前らしい。
しかし、通常の溶連菌感染症は腕がむくんだりする程度らしく、あまりの症状の酷さに欧米で「人喰いバクテリア」と恐れられた劇症溶連菌感染症かもしれないとも疑われた。
人喰いバクテリアならば2日で死んでしまう。
溶連菌感染症ならば投薬10日程で完全に治ってしまう。
だが私はそのどちらでもなかった。
投薬を続けて2週間を過ぎた頃。
母は体中真っ黒になった私を連れて、知り合いに紹介してもらった霊能力者の所に来ていた。
私を見てくれた彼女は普段は普通の主婦だが、霊視など神がかった能力を持っているらしい。
「押入れの奥に、この子が大切にしていた人形があるはずです。
 その子が寂しがっているので出してあげてください。
 その人形も、娘さんのように真っ黒に煤けている筈です」

彼女の言葉を信じて、押入れを開いてみた。
引っ越したばかりで荷物が整理しきれていない。
ぬいぐるみや子供服、玩具に押しつぶされる形で見つかった人形は、
煤けて肌が真っ黒に汚れていた。
人形は「みーちゃん」と名前を付けた、私の誕生祝にもらったもの。
みーちゃんの汚れを落として間もなく、私の肌はもとどうりの白い肌に戻った。
菓子折りと少しばかりのお礼を持って、相談を聞いてくれた彼女のところへ行くと、
お金は受け取ってもらえなかった。
「娘さんが人形を必要としているから、人形が呼んだんですよ」
くしゃりと頭をなでられた幼い私の腕には、少し汚れたみーちゃんが大事そうに抱えられていた。

後日談ですが、それから2度3度と引っ越しまして、今の家に落ち着いている形です。
しかし、屋根裏の倉庫、押入れ、どこを覘いてもみーちゃんの姿はありません。
母から「あんたの部屋にいたわよ」と言われたのですが、もう人形が必要な年でもありませんし、
何より、私はもちろん、誰も私の部屋にみーちゃんを持ち込んでいないのです。
狭い私の部屋、いくら探せど彼女の姿はありません。

bronco

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