この怖い話は約 3 分で読めます。

425 歩く市松人形 3/4 sage 2008/06/13(金) 19:22:54 ID:i4ODJraf0
どうやらこの人形、人形「自体」が出歩いているわけではなくて、人形にとりついている霊が人形の姿で出歩いているらしいです。
さすがにここまで大事になっては、本格的に祓わなければ次に襲われるのは私か母かもしれない。
というわけで、完璧に除霊することになりました。

なぜか私もそれに同席することとなり、訪れたその日の夜。
踏み入った仏間には、すでに人形が桐箱から出されて鎮座していました。
この人形、相当古いもののようですが、まだ色を残している着物を着ていて、間接は球体でちゃんと動かして遊べるものでした。
表情は日本人形によくある少し笑った感じで、髪の毛は黒々と肩あたりまであります。軽く汚れた肌の中で、細められた両目の奥の真っ黒な眼球が少し不気味です。
ちなみに髪の毛は一ミリたりとも伸びていませんでしたよ、念のためw

やがて父が数珠を手に経を詠み始めると、障子にカタカタ…カタ…と震えが走りました。
最初は地震?と思ったのですが、それがみるみるうちにガタガタガタッ!という大きなものになりました。
地面はまったく揺れていません。ただ、目に見えない衝撃波のようなものが部屋中の空気を震わせているようでした。
普通の状態だったら私とて間違いなく「何だこれ!」と叫んでいたと思うのですが、その時の私は妙に穏やかな気持ちでそれを見上げていました。
父が唱える経の音と、部屋中に響く大きな音を、じっと一つも漏らさず見つめていました。

426 歩く市松人形 4/4 sage 2008/06/13(金) 19:24:35 ID:i4ODJraf0
経を唱え終わる頃、いつの間にかその音も止み、部屋は再び夜の静けさを取り戻していました。近所から苦情も来なかったところを見るとこの部屋以外には音が一切していなかった模様。
「ほら、見てごらん」父はそう言って人形を持ち上げます。
「さっきより、ずっと穏やかな表情になったよ」
…すみません。正直、日本人形が不気味すぎて、その違いがわかりません(汗)
ただ、人形は人形として相変わらず薄汚れてるし、微妙に笑ってる表情とかもちょっと怖いままだったんだけど、
なんていうか…「ただの人形になった」感じはしました。

後日談ですが、まだ人形に霊が宿っているうちに、父が一度その人形の霊視を試みたそうです。
この市松人形はもともと雛人形でもあり、小さな子供、とくに裕福な子供が遊ぶのに使われていたようです。
ある日、その裕福な家に奉公に来た女の子が、裕福な子供に「人形盗んだだろう!」と言われたのでした。
裕福な子としてはただのいじめだったのでしょうが、そんなことを言われてはその家で働き続けることは出来ません。
泣く泣く元の家へ帰るのですが、家は家でもう食うや食わずのギリギリの生活ですし、だからこそ子供を奉公に出したわけで。
悩んだ末、なんと親はその女の子を、夜中に…頭から布団を被せて窒息死させてしまったのです。
そう。まさに、あの夜、私の父が霊にされたことでした。

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