Categories: 生物・妖怪

尾の長い生物

この怖い話は約 3 分で読めます。

後ろが振り向けない。
振り向く事が怖い。
心なしか、首に痛みすら感じる。

408 本当にあった怖い名無し sage New! 2006/10/28(土) 02:07:51 ID:CJLmAZrh0
(5/8)

…こぐしなかい。
ペダルを踏み込み、ただひたすら、僕はこぐ。
嘔吐感は収まらない。
しかし稲荷の祠が視界の端に見えた時ほっとした。
大丈夫だ。大丈夫。あそこに着けば、大丈夫だ。
妙な確信を持って、僕はひたすらこぐ。

首が変に痛い。
でももう少し、
もう少し、

着いた!

稲荷の祠の前で、急ブレーキ。
ガクン、と自転車は大きく傾き、慌てて片足で耐える。
その体制のまま、がばりと祠の方を向く。
首筋に痛みが走る。

……あれ?
在るべきものが、そこには無かった。

白い稲荷の置物は、消えていた。

瞬間、目の端に何かが映る。
白い尾だ。
異常に、長い尾を持つ何かが、僕の横を駆け抜けた。
見惚れるようにその犬の様なものを見ていれば、
ソレはあっと言う間に曲がり角を曲がり、視界から消えていった。

410 本当にあった怖い名無し sage New! 2006/10/28(土) 02:08:28 ID:CJLmAZrh0
(7/8)

思えば、自己暗示というものの一種だったと思う。
僕は事故中毒持ちだし、暗示にかかりやすい。
怖いと思った瞬間、自身で怖い現象を引き起こすのだ。
つまり、極度の性質の悪い怖がり。
そこは今でも変わっていないのが悩みだけれど。

けれど、一つだけ不可解な事があった。

雨に濡れて帰れば、母は飛んできてタオルを投げてよこした。
僕が風邪を引くのも困るけど、部屋が僕のせいで濡れるのはもっと困る。

タオルを置き、さきに僕はシャツを脱いで置き、
…そして、シャツに釘付けになった。

背中の、首元辺りに滲む赤い色が見える。
慌てて母を呼び首筋を見せた。
母は絶句し、僕もその母の言葉を聞いて固まった。

横一文字に、薄く血が滲み出して、そして蚯蚓腫れになっていたそうだ。

首が痛かったのはこのせいだったのだ。

やがて蚯蚓腫れは引いたが、横一文字の傷跡は、今も首筋に残っている。

414 本当にあった怖い名無し sage New! 2006/10/28(土) 02:10:07 ID:CJLmAZrh0
(8/8)

時々、その名神下の祠の横を通る事がある。
薄気味悪く、曇りガラスの中の狐は、睨むようにこちらを見ている。
昔は何で平気に、ここで立ち止まってお金を置いていたんだろう。

今の僕の方が怖がりなのか、そんな事を思い通り過ぎる。
そして、無意識に、首筋を触る。
一文字の傷が、そこにあることを確認する様に。

それは稲荷の祠の前を通る時だけの、変な癖だ。

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