この怖い話は約 3 分で読めます。

しばらくして、私と父は自分の部屋に帰った。
北海道の室内というのは、暖かい。それもそのはず、外はマイナス二度。
だがしかしそのときのそれはなんだか少し湿っぽい、妙な「暑くるしさ」だった。
母親の横に敷かれた布団に入る。祖母はすでに寝ていて、父親はすぐに眠ってしまった。
母は寝ていなかった。私は抱き枕がないこの状況だしあまり寝付けないだろうな・・なんてことを思い、しばらくもぞもぞしていた。

195 本当にあった怖い名無し sage 2011/08/20(土) 22:16:48.38 ID:7oYf09HB0
「臭い」

突然母が言った。

「なんで?別に臭くないよ」

「臭い。タバコ・・?かな、臭い・・!何かこげている!」

母が立ち上がった。廊下からにおいが漏れている、と思ったからだろう、扉が開いてないか確認しにいった。
扉は開いていなかった。そして第一、臭いは何もしなかった。

なんか、変な感じがした。
というのも実は私は軽ーい化学物質過敏症気味?で、タバコ、香水、芳香剤、シャンプーの匂いの9割を「ウンコよりも臭い」と感じている。
だから今でも女性の髪のにおいで吐きそうになるから人の真後ろには立てないし、
雑貨店は口呼吸で入るし、化粧品売り場は息を止めて通るし、美容院では洗濯ばさみで鼻をつまんでもらうことさえあった。
因みにそういう症状というか、性癖というのは母には全くない。
私はバラの匂いが大嫌いなのに、バラの芳香剤を買ってきてかなり本気で怒ってしまったことがあるような、私からすれば鈍感な人だ。

冷静に鑑みれば、そんな私が「臭くない」というのに母が「臭い」なんてそんなわけは無いのだ。
ましてや、タバコの煙なぞ私はかいだだけで咳き込んで、涙が出てくるほどだ。
しかし断じて、何の臭いもしなかった。

それでもその時は私は完全に楽観視していた。面倒だからさっさと寝ようと思っていた。
しかしあまりにも母が臭い臭いといって、
挙句の果てには非常用だかなんだかのでかい鉄の扉まで閉めてしまったときには
これはなんだかやばいんじゃないかと、流石になんとかしてやろうと
窓を開いてマイナス二度の空気を部屋に招きいれた。
よく考えれば、その状況も少しおかしい。全く寒くなかった。
それほどあの部屋の空気は澱んでいたというか、じめっとしていた。
窓際からあらためてみる、月の光りでぼんやりと青黒い室内は、矢張り嫌に暗かった。
今思えば、私も母も少しおかしかったように思う。

196 本当にあった怖い名無し sage 2011/08/20(土) 22:17:35.70 ID:7oYf09HB0
それでも怖い、という感覚は私にはなかった。
もしや祖父がついていてくれたのかな、と今になってぼんやり思う。
あのとき母はどれだけ嫌な感じを、恐怖を覚えていたのかそれを考えるとゾッとする。

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