Categories: ホテル・旅館

ずっと覗きますよ

この怖い話は約 2 分で読めます。

温かいシャワーを浴びてるのにぞわっと鳥肌が立って、シャワーカーテンを開いても誰もいない。
改めてカーテンレールの上を見てもさっきの顔はなかった。

ああ、こりゃやばいなーって思って、さっきまで飲んでた仕事先の人に電話。
理由も告げずに「もうちょっと飲まねえ?」って言ったら、「いいですよー」ってことで早々にホテルを後にして夜明かし飲んだ。
荷物は翌日朝に隠れるようにまとめて持っていった。

78 本当にあった怖い名無し sage 2012/07/26(木) 01:19:43.50 ID:AOCEMBpp0

まあそんなことがあって名古屋に戻り、何ヶ月かな?忘れたが、そろそろ忘れかけていた日。
休日の昼間に起きるという駄目人間っぷりを発揮して、洗面所で顔を洗っていた。

チリーン、チリーンって音が聞こえる。
「え・・・」って思って、勝手を知る自分の家のコップを抑えてみたり、蛇口を押さえてみたり、
棚を空けて配管を抑えてみたりしたけど音は収まらない。

「いやいやいや、ねえよ・・・」って思って流しっぱなしの水を止めようと蛇口に手を伸ばした瞬間、
家の外から、

「やっと追いつきましたーーーー、覗ける場所があったらずっと覗きますよーーー」

って、竿竹屋や灯油の移動販売みたいな、スピーカーから聞こえるような間延びしてぼんやりとした女の声がした。
え・・・って思って鏡を見ると、洗面所と廊下をつなぐドアの隙間から、あの無表情な顔が覗いていて。
あわててドアを閉めると鈴の音も収まった。

それ以来、ずっと、ドアや窓、箪笥や戸棚さえも開けっ放しにはしないようにしている。
「覗ける場所から覗く」ってことは「覗ける空間がなければいいんだ」と思うようにしている。
それに気をつけるようになってから、あの鈴の音は聞いていない。

兄貴(こちらも霊感はない。ただ妖怪の話が大好き)に話したら、「それ屏風覗きなんじゃねーの」って笑っていた。
特に害はないらしいが、新婚の初夜を覗くのが趣味の妖怪が、なんで俺を覗いていたのかは謎のままだ。

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