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783 甥 ◆4wXKovjUIc sage 2008/01/18(金) 16:55:40 ID:tvNSEzDC0
時刻は、深夜2時ちょっと前。オートロックなんて洒落た物は無いので、アパートの門を開けておく。
生前、彼女が気に入っていたワンピースを胸に抱き、蝋燭を灯し、部屋の灯りを消し、彼女の「蘇り」を想像した。
アパートは老朽化が激しく、2Fの真上の教会(彼の部屋の天井に当たる)から、何やら水漏れの様な音がする。
ピチャッ…ピチャッ…彼の部屋のどこかに水滴が落ちているらしい。そんな事はどうでも良い…集中して…
生前の…綺麗な姿で…彼女が微笑みながら…部屋にお茶でも飲みに来る様な…
ドンドン ドンドン
ハッ、と目が覚めた。いつの間にか寝ていたらしい。
ドンドン ドンドン
何の音…?隣の住人?隣人も夜型の人だから、うるさ
ド ン ド ン ! ! ド ン ド ン ! !
…違う。自分の部屋の玄関のドアを、誰かが叩いている。時計を見ると、深夜2時50分。
こんな時間に友人…とは考えにくい。…まさか。流石に冷汗が額を伝う。
蝋燭を手に持ち、恐る恐る、玄関に近づく。叩く音が止んだ。
784 甥 ◆4wXKovjUIc sage 2008/01/18(金) 16:56:25 ID:tvNSEzDC0
「…誰?」
返事がない。
「00か…?」
彼女の名を呼ぶが、返事が無い。恐る恐る、覗き穴から覗く。
長い髪の女が、後ろを向いてドアの前に居る!!何者かが、確実に居る!!
「00なら答えてくれ…」
青年は、ふいに涙が溢れてきた。楽しかった思い出の数々が蘇る。
「寒い…」
ふいに、女が口を開いた。彼女の声の様な気もするし、そうではない気もする。
「寒い…中に入れて…00」
女は青年の名を呼んだ。涙が止まらない。抱きしめてやりたい!!青年は、ルールの事など忘れて、ドアを開けた。
女は信じられないスピードで、後ろ向きのまま、スッ、と部屋に入った。
青年が顔を見ようとするが、長い髪を垂らし、俯いたまま必ず背中を向ける。
青年が近づこうとすれば、スッと距離を置く。
785 甥 ◆4wXKovjUIc sage 2008/01/18(金) 16:57:08 ID:tvNSEzDC0
「とりあえず、ベッドにでも腰掛けてくれよ…」
青年が言うと、女は俯いたままベッドに腰を落とした。
しかし、この臭い…たまらない臭いがした。彼女が歩いた跡も、泥の様なモノが床にこびり付いている。
しかし、彼女は彼女だ。色々と話したい。死人にお茶を出すのも妙な気がしたが、2人分の紅茶を入れ、彼女の横に座った。
蝋燭をテーブルに置き、青年は語り尽くした。死んだ時苦しくはなかったか、生前のさまざまな思い出、守ってやれなかった事…
1時間は一方的に語っただろうか。相変わらず彼女は俯いたまま、黙ってジッとしている。
やがて、蝋燭の蝋が無くなりそうになったので、新しい蝋燭に変える事にした。火をつけて彼女を照らす。