Categories: 心霊良い話

本当の親子のよう

この怖い話は約 3 分で読めます。

義母を送り出した日、手を振る義母の姿を最後にするつもりは毛頭なかったのに。

680 名前: 3/6 04/09/28 08:31:18 ID:YAmMlNej

三ヶ月ほど経った頃だろうか。
義姉から義母が亡くなったという連絡を受けた。
無意識に覚悟をしていたのか、その連絡を私は厳粛な気持ちで受け止めた。
しかし、お葬式に行き、義母の遺品整理のため義母のアパートを訪れた時は胸をかきむしられた。
広告の裏に几帳面な小さな文字で、ここに来てからの家計簿が記されていた。
わずかな年金と、わずかな私の仕送りを細々と書き記す義母の姿を思うといたたまれなかった。
何もしてあげられなかったと思う。
おいしいものをたくさん食べさせてあげたかったし、旅行にも一緒に行きたかった。
義母のために何かをプレゼントもしたかった。
結局なにもできずじまい。
心の中で義母に詫びた。

悲しみふさぐ気持ちを払拭してくれたのが義姉だった。
義姉も、義母が大阪に戻ってきた時に私と同じような予感を感じたらしい。
そして彼女は母親に生命保険をかけたのだ。
悲しみは義姉に対する怒りにかわった。
「この金はあんたにやる義理はないからな!」
「面倒みて何ももらえんとおあいにくさまやな。」
そんな下品な言葉を聞き、一発なぐってやろうかとさえ思った。
だが義母の霊前でその娘をなぐるわけにもいかず、どんな無神経な発言も耐えることにした。
義姉を憎む気持ちはお葬式から帰ってきてからも消えなかった。

681 名前: 4/6 04/09/28 08:33:17 ID:YAmMlNej

深夜、ふと人の気配で目が覚めた。
見れば義母が正座して私を見つめている。
驚いて「お義母さん、どうしたの!?」と、飛び起きてたずねた。
すると頭の中に直接義母の声が響いた。
「あんたになにも残してあげれなくてごめんな。」そういって、義母は畳に手をついて頭を下げた。
いよいよ驚いて、私も布団の上に正座して
「そんなこと、なんにも思ってませんってば!!」
「○子(義姉の名前)のこと、許してやってね。あの子も今つらいんや。許したってね。」
母親の気持ちは母親になれば痛いほどわかる。
どんな子供であってもかわいいし、子供の欠点は自分のせいだと自分を責めるし、
ましてや子供が苦しんでいるのなら自分が死んでたって心配するものだ。
私も手をついて義母に頭を下げた。
「お義母さんごめんなさい。もうお義姉さんのこと許したから。もう悪く言いません。」
そういって頭を上げると、義母はすーっと消えていった。
私は布団の上に正座したまま、しばらく、義母と会話をした幸せな余韻を楽しんでいた。

義母とはその後、もう一度再会した。
義母の予言どおり、私はすぐに男の子をみごもり、そして出産。
ダンナの改心を願っての出産だった。
しかし願いは届かず、あいかわらず働かないのだ。二人の子供の父親なのに。
私は全てに失望しかけていた。生活に疲れすぎていたんだと思う。

Page: 1 2 3 4

bronco

Share
Published by
bronco
Tags: 公園痛い

Recent Posts

迷い

霊とかとは全然関係ない話なんだ…

4年 ago

血雪

全国的にずいぶん雪がふったね。…

4年 ago

母親の影

私が小6の時の夏休み、薄暗い明…

4年 ago

閉じ込められる

彼はエレベーターの管理、修理を…

4年 ago

彼女からの電話

もう4年くらい経つのかな・・・…

4年 ago

テープレコーダー

ある男が一人で登山に出かけたま…

4年 ago