この怖い話は約 3 分で読めます。

もういろいろ済んだから、書かせてくれ。
かなり長い。

父親には妹がいたらしい。俺にとっては叔母にあたるが、
叔母は生まれて数ヶ月で突然死んだ。原因不明。
待望の娘が死んでしまい、婆さんは大層落ち込んでいた。
見兼ねた爺さんが婆さんにフランス人形を買い与えると、
婆さんはそのフランス人形に叔母と同じ名前の「千寿江」と名付けて可愛がった。
毎日撫で、傍に置き、綺麗にしてやり、共に寝たそうだ。

それが変わったのが、俺の妹が生まれてから。
女が生まれて、婆さんは酷く喜んでた。
両親共働きだったし、代わりに婆さんが妹を大層可愛がって育てた。俺も可愛がられたけどな。
それで、今まで大切にされていた千鶴江の定位置は、婆さんの枕元でなく、仏間になった。
誰もいない仏壇だけがある仏間だ。
俺はよく先祖へ挨拶しろと、
夕飯前に御神酒を上げにそこへ
行かされていたもんだ。
暗くてくそ寒い、不気味な部屋

654 2/10 sage New! 2013/11/24(日) 23:43:28.58 ID:zUKnxq1Si
小学校高学年の時、いつも通り御神酒を上げに仏間に入り、仏壇に手を合わせた。
その時、誰かが後ろに立っているような気がしたんだ。
振り返ると何もない、いつも通り、ピンクのドレスの千寿江がいるだけだ。
それがその時は妙に怖かったのと、多感な時期だったのもあって、思わず
「なんだよ、文句あるのかよ。かかってこいよ」
と、千寿江を挑発した。馬鹿だよな。
居間に戻って家族に「千寿江に睨まれた!」と報告すると婆さんが激怒してな…。
後にも先にも婆さんがあんなに怒った事はない。
怒る婆さんに合わせるように父親も激怒、ゲンコツをくらった。俺涙目。
その時は謝ってそれで終わり。

655 3/10 sage New! 2013/11/24(日) 23:44:22.76 ID:zUKnxq1Si
問題が起きたのは数日後だった。
休みの日だったか、まだ明るい時で仏間もいやに明るかった。
昨晩、下げ忘れた御神酒を下げに仏間に入ると、千寿江が定位置にいない。
いつも置いてある棚から落ちて、畳へ。手首が外れていた。
正直、俺に何かするために這い出して動かしたのかと…。
びびって走って家族の居る居間にいると、婆さんがいて、
怒られるかもとは思ったが、本気で怖かったかは婆さんに報告。
俺の尋常じゃない様子に婆さんも心配になったのか、一緒に居間にきてくれた。
そしたら千寿江は、今度はちゃんと定位置にいた。手首もついてる。
俺が嘘を吐いた感じになってしまったが弁明している時に親父がきて、
「あ、悪い。それ俺が落とした。トイレ行ってから直したんだよ」
って。犯人親父かよ!
勘違いして半泣きになってる俺を親父が爆笑して、婆さんも今度は俺を慰めて、事なきを得た。

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