この怖い話は約 3 分で読めます。

429 4/7 sage New! 2007/11/30(金) 15:30:20 ID:GednxxFq0

百を読んだ鬼が、母屋から走ってきました。

はじめに土間や台所を探していたのでしょうか、しばらくしてから祖父の隠れた部屋へと踏み込んできました。
積まれた荷物の隙間に、器用に身を収めた祖父を見つけるのは難しく、
鬼は「くっそー、どこだー」と言う言葉を残して部屋を後にしました。

安堵した祖父が荷物の隙間から顔を覗かせたその時、上の部屋から「ガタンッ」と言う少し大きな音がしました。
それを聞きつけた鬼は、祖父の隠れていた部屋で音がしたものと間違え、再び部屋に戻ってきました。
突然の物音に呆けていた祖父は、あっけなく鬼に見つかりました。

鬼は祖父を見つけたあと、一階の残り二部屋、再び台所を探した後、二階へと向かいました
物音が気がかりな祖父は、鬼のあとについて一緒に二階へ。
どの部屋にも荷物が積まれ、鬼はその中をくまなく探しました。

ですが、いずれの部屋にも、兄はいませんでした。

430 5/7 sage New! 2007/11/30(金) 15:32:09 ID:GednxxFq0

残った部屋は「あの部屋」だけでしたが、余所様の家で出入りを禁じられている部屋です。
強い確信を持ちながらも、鬼はその部屋の襖すら開ける気にはなれませんでした。
部屋の前から「***くん、そこに隠れてるだろ」と呼びかけるも返事はなく、
目で合図を受けた祖父は、「ここに隠れてるはず」と返す。

そんなやり取りの中で、襖の向こう、部屋の中から「カタ、コトン」と硬い音がしました。
その音に後押しされ、二人は襖を、勢いよく、開けました。

部屋には一つの荷物も無く、人の気配も無く、本当に何もありませんでした。
奥に一つ押入があり、ためらいがちに部屋に踏み入った二人は押入の戸を開きました。

むわっ、と何か塊になったような空気が流れ出してきました。
ですが、押入の中に期待していた兄の姿はなく、ただ一つ、小さな水(酒?)の入った杯が置かれていました。
言葉にできない気味の悪さに包まれ、二人は逃げるように部屋を後にしました。

431 6/7 sage New! 2007/11/30(金) 15:35:36 ID:GednxxFq0

結局、兄は見つかりませんでした。

部屋と言う部屋、人の隠れれそうな場所は何度も探し、呼びかけました。
離れだけでなく、母屋も必死になって探しました。どこに兄の姿はありませんでした。

事態に怖くなった二人は、家の者が帰る前に外へと出ました。
兄が見つからなかったら、こう言おう。「今日は二人で外で遊んでいた」。

夕方、帰ってきた両親と姉。
兄を探す母に「***はどこ行ったの?」と聞かれましたが、知らぬ存ぜぬを通しました。
夜になっても帰らない兄を、父が探しに出かけました。
夜も更けて、未だ見つからない兄を隣近所の大人も探しました。

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