「海を見たらあかん日があるんや」

この怖い話は約 3 分で読めます。

とシュウちゃん。
おおばあ達が今朝、何かそれらしいことを口にしていたらしい。それをシュウちゃんが聞いたようだ。
ちょっと確かめてみたいけど、2階も雨戸が閉まってて外が見えない。

「便所の窓開くんちゃうかな」

さっきトイレの小窓がすりガラスで、雨戸がなかったのを思い出した。
便所は家の端で海側(道路側)に窓があるから、二人で見に行こうと言うことになった。

冬のトイレは半端じゃなく寒いんだけど、窓の一つ向こうに何かがいるという思いこみから、
秘密基地に籠もるような、奇妙な興奮と、同時に背筋に来るような寒気を覚えた。

「ほんまにおるん?(本当にいるの?)」

小声でシュウちゃんに話しかけ、
シュウちゃんもヒソヒソ声で

「いるって、おばあが言ってたもん」

818 803 ◆8bbhN14TpI sage 2007/11/05(月) 14:12:57 ID:EYJeND380

トイレの小窓は位置が高く、小学生の自分の背丈では覗けない。
便器の給水パイプが走ってるから、そこに足を乗せて窓を覗く形になる
最初は自分が外を見ることになった。

音を立てないように静かに窓をずらして、外を見た。

軒の下で籠が揺れてる。
視界の端、道路から家まで、何か長いものが伸びていた。
よく分からないけど、その長いもののこちら側の先端が、少しずつこっちに向かってきている。
10秒ほど見てから、何か無性に恐ろしくなって身震いして窓を閉じた。

「誰かいた?」
「よく分からんけど、何かおった」
「僕も見る」
「何かこっちに来てるみたいやし、逃げようや」

多分、自分は半泣きだったと思う
寒さと、得体の知れない怖さで今すぐ大声で叫んで逃げたかった。

820 803 ◆8bbhN14TpI sage 2007/11/05(月) 14:36:36 ID:EYJeND380


「な、もどろ?」

トイレのドアを開けて、シュウちゃんの手を引っ張った

「僕も見る。ちょっとだけ。ほんのちょっとだけだから!」

シュウちゃんが自分の手を振り切って戻り、給水パイプに足を乗せた
窓をずらしくて覗き込んだシュウちゃんは、しばらくしても外を覗き込んだまま動かなかった

「なあ、もうええやろ?もどろうや」
「**くん、これ、」

言いかけて途中で止まったシュウちゃんが、外を覗き込んだまま「ヒッ ヒッ、」と引きつったような声を出した
何がなんだか分からなくなってオロオロしてると、自分の後ろで物音がした。

「お前ら何してる…!」

シュウちゃんのお父さんがものすごい形相で後ろに立ってた

821 803 ◆8bbhN14TpI sage 2007/11/05(月) 14:38:16 ID:EYJeND380
言い訳どころか、一言も喋る前に、自分はシュウちゃんのお父さんに襟を掴まれ
便所の外、廊下に放り出された。一呼吸おいてシュウちゃんも廊下に放り出された
その後、トイレのドアが叩きつけるように閉められた。

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