この怖い話は約 3 分で読めます。

434 血   前編 ウニ New! 2006/06/03(土) 12:18:46 ID:3rNkYIQb0
次は、家で歯磨きをしているときだった。
パチ、パチ、と2回、暗闇に視界がシャットダウンされた。
驚いて、口の中のものを飲んでしまった。
そんなことが数日続き、ノイローゼ気味になった俺は師匠に泣
きついた。
師匠は開口一番、
「だから言ったのに」
そんなこと言われても。なにがなんだか。
「その女のことを嗅ぎ回ったから、向こうに気づかれたんだ。
『それ』はあきらかにまばたきだよ」
どういうことだろう?
「霊視ってあるよね? 霊視されている人間の目の前に、霊視
している人間の顔が浮かぶっていう話、聞いたことない? 
それとはちょっと違うけど、そのまばたきは『見ている側』の
まばたきだと思う」
そんなバカな。
「見られてるっていうんですか」
「その女はヤバイ。なんとかした方がいい」
「なんとかなんて、どうしたらいいんですか」
師匠は、謝りに行ってきたら? と他人事まるだしの口調で
言った。
「ついて来て下さいよ」と泣きついたが、相手にされない。
「怖いんですか」と伝家の宝刀を抜いたが、「女は怖い」の
一言でかわされてしまった。

435 血   前編 ウニ New! 2006/06/03(土) 12:20:14 ID:3rNkYIQb0
京介さんのマンションへ向かう途中、俺は悲壮な覚悟で夜道を
歩いていた。
自転車がパンクしたのだった。
偶然のような気がしない。
またガムを踏んだ。
偶然のような気がしないのだ。
地面に靴をこすりつけようとして、ふと靴の裏を見てみた。
心臓が止まりそうになった。
なにもついていなかった!
ガムどころか、泥も汚れも、なにも。
では、あの足の裏を引っ張られる感覚は一体なに?
「京子」さんのことを嗅ぎ回るようになってから、やたら踏
むようになったガムは、もしかしてすべてガムではなかったの
だろうか?
立ち止まった俺を、俺のではないまばたきが襲った。
上から閉じていく世界のその先端に、一瞬、ほんの一瞬、黒く
長いものが見えた気がした。
睫毛?
そう思ったとき、俺は駆け出した。
勘弁してください!
そう心の中で叫びながら、マンションへ走った。

436 血   前編ラスト ウニ New! 2006/06/03(土) 12:21:43 ID:3rNkYIQb0
チャイムを鳴らしたあと、「うーい」というだるそうな声とと
もにドアが開いた。
「すみませんでした!」
京介さんは俺を見下ろして、すぐにしゃがんだ。
「なんでいきなり土下座なんだ」
まあとにかく入れ、と言って部屋に上がらされた。
俺は半泣きで、謝罪の言葉を口にして、今までのことを話した
はずだが、あまり覚えていない。
俺の要領を得ない話を聞き終わったあと、京介さんはため息を
ついてジーンズのポケットをごそごそと探り、財布から自動二
輪の免許書を取り出した。
『山中ちひろ』
そう書いてあった。
俺は間抜け面で、
「だ、だって、背が高くてショートで・・・」
と言ったが、
「私は高校のときはずっとロングだ」
バカか、と言われた。
じゃあ、間崎京子というのは・・・
「お前は命知らずだな。あいつにだけは、近づかないほうがいい」
どこかホッとして、そしてすぐに鳥肌が立った。

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