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957 目覚め ラスト  ◆oJUBn2VTGE ウニ 今夜は終わりです 2010/12/17(金) 23:43:28 ID:1sx/PKqt0
一瞬、窓ガラスの表面から夜の冷気が流れてくる。吐く息でガラスが白く曇った。
パジャマの袖でそれを拭うと、ささやかな庭と植木、そしてブロック塀の向こうの道路が見える。寝静まる住宅街。豆電球の暗い黄色の明かりとは違う、細い針のような月の光が、かすかにそれらを照らしている。
庭を横断する石畳の筋。それを囲む背の低い芝生。その向こうに玄関の門。
誰かいる。
冷たく高まる鼓動を聞きながら、ガラスに顔を近づける。冷たい空気が頬を撫でた。
門の石柱の前に立たったまま、チャイムを鳴らすでもなく、庭に入り込もうとするでもなく、その誰かは身動き一つしない。
『夜中に急に目が覚めるのは、家の外に誰かが訪ねてきているからだよ』
…………
一度も外を覗いたことはなかった。
本当はその度ごと、こんな風に誰かが外に立っていたのだろうか。
吐く息が冷たい。身体中が悪寒に震えている。
雲の切れ間が変わったのか、一瞬、その誰かの顔を冴えざえとした月光が浮かび上がらせた。
虚ろな顔。男。覚えはないが、なぜか懐かしい。
そう言えば小学校の同級生に、似た顔の子がいたような気がする。大きくなればこんな顔だろうか。
男は月の光に怯えたように顔をゆっくりと左右に振る。そして後ろを向くと肩を落として歩み去って行った。闇の中へ。消え入るように。近くの森に棲む山鳩の、ほうほう、という声が聞こえる。
自分が眠ってさえいれば、そして寝床から出さえしなければ、誰も知らなかったはずの光景が、そうして終わった。
カーテンを戻し、窓際を離れてもう一度布団に向かう。
知らなくていいことは、知らずにいよう。
そう思った。

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