この怖い話は約 3 分で読めます。

391 怖い夢  ◆oJUBn2VTGE ウニ 2006/12/02(土) 14:30:15 ID:Q8VwWIU/0
幽霊を見る。
大怪我をする。
変質者に襲われる。
どんな恐怖体験も、夜に見る悪夢一つに勝てない。
そんなことを思う。
実は昨日の夜、こんな夢を見たばかりなのだ。

自分が首だけになって家の中を彷徨っている。
なんでもいいから今日が何月何日なのか知りたくてカレンダーを
探している。
誰もいない廊下をノロノロと進む。
その視界がいつもより低くて、ああ自分はやっぱり首だけなんだと思う
と、それがやけに悲しかった。
ウオーッと叫びながら台所にやってくると、母親がこちらに背を向けて
流し台の前に立っている。
ついさっきのことなのに何故かもう忘れてしまったが、俺はなにか凄く
恐ろしいことを言いながら母親を振り向かせた。
するとその顔が、   だった。

393 怖い夢  ◆oJUBn2VTGE ウニ 2006/12/02(土) 14:33:59 ID:Q8VwWIU/0
という夢。
こんな夢でも、体験した人間は身も凍る恐怖を味わう。
しかしそれを他人に伝えるのは難しい。
4時間しか経っていないのにすでに目が覚める直前のシーンが思い出せない。
けれど怖かったという感覚だけが澱のように残っている。

そんな恐怖を誰かと共有したくて、人は不完全な夢の話を語る。しかし上手
く伝えられず、「怖かった」という主観ばかり並べ立てる。えてしてそう
いう話はつまらない。もちろん怖くもない。
それを経験上わかっているから、俺はあまり怖い夢の話を人に語らない。
いや、違うのかもしれない。
怖い夢を語るというのは、人前で裸になるようなものだと、心のどこかで思っ
ているのかもしれない。それは情けなく、恥ずべきものなのだろう。夢の中
の恐怖の材料はすべて自分自身の投影にすぎない。
結局自分のズボンのポケットに入っているものに怯えるようなものなのだから。

394 怖い夢  ◆oJUBn2VTGE ウニ 2006/12/02(土) 14:35:25 ID:Q8VwWIU/0
大学2回生の春。
俺は朝からパチンコに行こうと身支度を整えていた。目覚まし時計まで掛け
て、実に勤勉なことだ。その情熱のわずかでも大学の授業へ向ければもっと
ましな人生になったかと思うと、少し悲しい。
ズボンを履こうとしているときに電話が鳴り、一瞬びくっとしたあと受話器
をとると「すぐ来い」という女性の声が聞こえてきた。
オカルト仲間の京介さんという人だ。「京介」はネット上のハンドルネーム
である。
困りごとがあってこっちから掛けることはよくあったが、あちらから電話を
掛けてくるなんて実にめずらしかった。
俺はパチンコの予定をキャンセルして、京介さんの家へ向かった。
何度か足を踏み入れたマンションのドアをノックすると、禁煙パイポを加えた
京介さんがジーンズ姿で出てきた。
いったい何事かと、ドキドキしながらそして少しワクワクしながら部屋に上がり、
ソファに座る。
まあ聞け、と言って京介さんはテーブルの椅子にあぐらをかき、語り始めた。
「すげー怖いことがあったんだ」
声が上ずり、落ち着かないその様子はいつもの飄々とした京介さんのイメージ
とは違っていた。

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