あやこさんの木

この怖い話は約 3 分で読めます。

恐怖もあったが、明日はこの話題で持ちきりになるだろうという嬉しさのほうが強かった。
早く家に帰ろう、そう思い自転車をこぎ出すと、市内放送が流れた。

こんな時間に市内放送が流れるなんてめったにない。
自転車を止めて聞いていると、どうやら小学生の女の子が行方不明になっているらしい。

小学生の女の子?さっきの切り株に座っていた女の子が頭をよぎった。
あの子かな?でもなんであんなところに座っているんだろ?

正直かなり怖かったが、女の子を見つければヒーローになれる。
その誘惑に勝てず、一人で校庭に忍び込むことにした。

校門の前に自転車を止めて、校門をよじ登り飛び降りた。
その瞬間にゾクッという悪寒が走った。

ただでさえ夜の学校は怖いのに、その上、あやこさんの木の切り株の上に女の子が座っている。
どうしようか迷った。一度家に帰って親と一緒に来ようか?
でもやはり一人で見つけたかった。

909 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/07/15(金) 02:08:16.90 ID:MtKJwrm10
校門からあやこさんの木まで100メートルちょっとある。
ビクビクしながらあやこさんの木に近づいていった。

女の子は顔を伏せて切り株の上で体育座りをしている。
異常な光景を目の当たりにして声を掛けることができなかった。

ここまできて引き返そうかとも思った。
それほど目の前の女の子が怖かった。
でも足が動かない。

1分ほど黙って女の子の前に立っていたが、意を決して「どうしたの?」と声をかけた。
女の子は顔を伏せたまま「・・・・たの?」と言ったがボソボソと話して聞こえない。

「え?」と聞き返すと「どうして切ったの?」と訊いてきた。
あやこさんの木のことかなと思ったが、私にどうしてと言われてもわからない。

答えられずにいると女の子はゆっくりと顔を上げて私を見つめた。
普通の女の子だ。

だが女の子の顔が怒りの表情に変わっていく。
立ち上がって切り株から降り、近づいてきた。

910 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/07/15(金) 02:11:04.95 ID:MtKJwrm10
逃げ出したかったが、やはり恐怖で足が動かない。
女の子は私の目の前で止まり「どうしてだーーーーーーーー」と叫んだ。

その瞬間に「あ゛あああああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁ」というあの歪んだ声が学校から聞こえてきた。
学校の窓は全て閉めてあるが声が漏れて聞こえてくる。

あまりのことに私は女の子を突き飛ばし全速力で逃げた。
校門まで遠い。振り返りたい衝動に駆られたが絶対に振り返ってはいけない気がして、とにかく全力で走った。
走ってる最中も学校からはあの声が聞こえる。

校門の前にパトカーが止まっているのが見えた。
助かった。涙が出そうなほど嬉しかった。
「助けてーーーー」と夢中で叫んだ。

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