この怖い話は約 3 分で読めます。

話を戻しましょうか。その男が、ならあの女は俺らがもらう。ってんですよ。
仕方が無いな、ともう諦めの境地でしたよ。私に害が及ばないのであれば、
どうぞご自由に、と。え?鬼?悪魔?鬼畜?はぁはぁ、ごもっとも。でもね、水商売なんて心を殺さないとやってけないんですよ。晴美に惚れてたならまだしも、正直体にしか興味ありませんでしたからね。え?やっぱり鬼畜?はぁはぁ、結構です。
それでもって、男が妙な事を言い出したんですよ。あの女の事を今後一切忘れ、他言しない事を誓うならば、これを受け取れ。と言うと、私に膨れた茶封筒を差し出したんですよ。丁度百万入ってましたよ。でもね、嫌じゃないですか。

ヤクザから金もらうなんて。下手したら後で、あの時の百万利子つけて返してもらおうか、何て言われちゃたまりませんからね。断りましたよ。そしたら、その幹部の連れのチンピラが、ポラロイドカメラでもって私を撮ったんですよ。

そしてその幹部が、この金を受け取らなかったら殺す、って言うんですよ。
何で私がこんな目に、と思いましたよね。渋々受け取りましたよ。そして、
もし今後今日の事を他言する様な事があれば、お前が世界のどこにいても
探し出して殺す、と。その時、私は漠然とですが、晴美は風俗に沈められるのでは無く、他の事に使われるんだな、と思ったんですよ。もっと惨い事に。

838 第三夜 2006/05/10(水) 13:26:40 ID:0zfG5UVO0

晴美はある程度の衣服やその他諸々を旅行鞄に詰め込み、そのまま連れて行かれました。
別れ際も、私の方なんて見ずにつつ~と出て行きましたね。結構気丈な女なんですよ。
1人残されたアパートで、私はしばらくボーッとしてました。明日にでもスナック辞めてどこかへ引っ越そうと思いましたね。嫌ですよ。ヤクザに知られてるアパートなんて。

ふと、晴美が使っていた鏡台に目がいったんですよ。リボンのついた箱が置いてあるんです。
空けて見ると、以前から私の欲しがってた時計でした。あぁ、そういえば明日は私の誕生日だ。
こんな私でも涙がつーっと出てきましてね。その時初めて、晴美に惚れてたんだな、と気がつきました。え?それでヤクザの事務所に晴美を取り返しに行ったかって?
はぁはぁはぁ、映画じゃないんですから。これは現実の、しょぼくれた男のお話ですよ。

翌日、早速スナックを辞めた私は、百万を資金に引っ越す事にしたんです。
出来るだけ遠くに行きたかったんで、当時私の住んでた明太子で有名な都市から雪祭りで有名な都市まで移動しました。そこを新たな生活の場にしようと思った訳です。
住む場所も見つかり、一段落したので、次は仕事探しですよ。もう水商売はこりごりだったので、何かないかなと探していると、夜型の私にピッタリの、夜間警備の仕事がありました。面接に行くと、後日採用され、そこで働くことになったんですよ。

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bronco

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