この怖い話は約 3 分で読めます。

そこでふと思い立ったのはお守りの存在でした。
昔の話によくあるベタなアレですが、お守りの中にお金を入れておいて
困った時にお使いなさい、みたいな気遣いの仕方がありますよね。
ひょっとしたらあのハカソヤの中にお金が入ってたりとか?などと
甘っちょろい期待を抱いてハカソヤを開けてみたんです。

ところが中にはお金など入っていませんでした。
入っていたのは形付けの厚紙と、小さい古びた布キレだけ。
二~三センチほどの、目の洗い木綿かガーゼのような布で、その半分ほどが
茶色い染みで染まってて、乾いて固まってベコベコと波打っている。
ずいぶんと古い布のようで、地の部分も黄ばんでいました。

一体これは何なんだろう?私は妙な方向に思考をめぐらせていました。
生理の時汚れたショーツを放置しとくとこんな固まり方するんだよね…。
布が変な並打ち方して固まって…
てことはこれ…血…?
でも一人前のはなむけのお守りになんで血のついた布切れなんか?

時間がたつにつれて気になってしょうがなくなってしまい、とうとうお金の
無心の電話にかこつけて、母に聞いてみることにしました。
母は私がハカソヤを叔母からもらっていたことすら知らなかったらしく
驚いた様子でした。
「あの布は何なの?」と聞いてみましたが、母はただ静かな声で
「酷いことが起こらないよう気をつけてね」と言うだけで、結局何も
教えてくれませんでした。

どうしても気になったので、今度は叔母に電話してみました。
久々に話した挨拶もそこそこに私はまくし立てました。
「あれは何なの?あの布は、あの染みは」
叔母は、あれ、知らなかったっけと言う風に、さらりと言いました。

「何って、血よ。女の子の。
ハカソヤは男にひどいことされないためのお守りだって、
○○ちゃん姉さんから教わらなかったの?」

一瞬何を言われたのか分かりませんでした。
叔母がしてくれた説明はこうです。

すいません、まだ続きます

儒教が伝わる以前はどこの地方でもそうだったらしいけれど、
日本はものすごく性に関してフリーと言うか、他人の奥さんを
何か物でも借りるみたいに借りては犯して、生まれた子は皆で
村の子として育てるみたいな感じだったそうですね。
夜這いなんかも堂々と行われていたのが当然だったとか。
時代がすすむにつれて一般的にはそのような価値観は薄れたのですが
うちの集落は依然としてこんな女性に辛い気風が残っていたそうで。
山奥にあるので情報が伝わりにくかったのと、この地方は貧しいし
冬には農作業も出来なくて、娯楽ややることががセッ*スくらいしか
なかったのが関係してるのではと思います。

とはいってもそんな大勢の男に好き放題されて、十月十日誰の子とも
おぼつかない子供を孕まなければいけない女性の苦悩は並大抵では
なかったでしょう。
そこで女性達が鬱憤晴らしのためか、それとも本当に男達に復讐しようと
したのかは分かりませんが、作り出したのがハカソヤだそうです。

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