この怖い話は約 3 分で読めます。

年のせいか、評判よりずっと丸くなったようで、感じのよい老婆だったとか
息子夫婦も好感の持てる人物で、これをきっかけに親戚付き合いが戻るかも、と女将は喜んだ
しかし、女将が人形を返してから一週間もたたないうちに訃報が届いた
従妹が亡くなったそうだ

女将は人形が従妹の最後によりそうために、私たちを頼ってきたのかねえ、と語った
オレはにわかに全てを消化することはできなかったが、
なんとなく物の縁や人の縁に触れることができた気がして、まんざらでもなかった
しかし、この一件は終わってはいなかった

574: 本当にあった怖い名無し:2011/06/21(火) 22:08:24.86 ID:g26ky4bm0
人形が再び現れた
今度は夢の中ではなかった
夜物音で目を覚ました
家はアパートの一階なのだが、どうも窓の外の庭でカタカタなにかが音を立てている
風のせいかと思ったが、どうも気になって寝つけなかったので、
片付けようと窓を開けるためカーテンを引くと、いた

夢で見た、女将が持ってきた、
あの人形だった

青みがかった髪が揺れている
風はない

カタカタ揺れているのは人形自体が動いており、コンクリートに足をうちつける音だった
カタカタカタカタカタカタカタカタ

ただ一点にとどまり揺れ続けている

以前の夢では、人形の表情など気に留めなかったが、今度は一目でわかる
怒っている

穏やかだがとてつもない憎悪の表情
どういう根拠かは説明できないが、とにかくそう直感した

オレはカーテンを閉め、布団にもぐり込んだ
音は夜明けまで続き、オレは眠ることができなかった

翌日女将にこの事を伝えた
やはりというか、女将の家にも人形は現れたらしい
寝室の隅でカタカタ揺れる人形を見て、恐怖のあまり家を飛び出し、
寝巻きのまま朝までファミレスで夜を明かしたという
主人は気づかなかったとか

その日はとてもオレは家で寝る気になれず、友人の家に泊まった
その夜、女将から電話があった

577: 本当にあった怖い名無し:2011/06/21(火) 22:09:16.91 ID:g26ky4bm0
従妹の死に不審な点が見つかり、息子夫婦が殺人の疑いで捕まった
亡くなる直前、人付き合いが全くなかった従妹を突然訪ねてきた
女将とオレに話を聞きたいという、警察から連絡があったという

オレたちこの一連の話をしたが、もちろんとても役立ちそうな情報ではなかった
人形の下りなど、当然信じてはもらえるはずもなく、そのような人形はあの家にはなかったという
詳細はわからないが、どうも従妹は長い間虐待を受けていたらしく、それにより激しく衰弱していたらしい

オレたちはようやく察した
人形は従妹のもとに連れていけと訴えていたのではなく、
従妹を助けて欲しかったのだ
そして気づくことのできなかったオレ達を恨んでいる

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