この怖い話は約 3 分で読めます。

329 : 動物たちの試練1 : 2012/06/04(月) 21:52:37.55 ID:/DXG8eQp0
昨年の初冬に体験した話を投下します。
わりと長文。

その日は林業関係の取材で「低コスト・高効率作業システム」という
題目の研修会に同行した。
内容は、まず導入を進める作業機械の説明などを公民館でおこない、
その後に実際の作業風景を見学するというものだ。
林業関係者なら分かると思うが、グラップルとかフォワーダといった
造材や間伐で活躍する機械だ。
330 : 動物たちの試練1 : 2012/06/04(月) 21:55:16.24 ID:/DXG8eQp0
研修会には、地元の林業関係者ら約40人が参加。
公民館での説明は何事もなく終了し、作業見学の場所へ移動した。
見学場所は、割と道幅のある新道と
狭く曲がりくねった旧道に挟まれる形で存在している山の雑木林。
新道からも行けるのだが、
目的地に行く林道が狭く悪路な上、距離が長いということで
旧道の方から入る林道を使うことになっていた。

331 : 動物たちの試練3 : 2012/06/04(月) 21:57:23.79 ID:/DXG8eQp0
取材の方はつつがなく終了した。
途中から雪がちらついてきたが作業には全く問題なし。
取材が終わった俺は、次の予定もあったので見学会の途中で辞去して戻ることにした。
今にして思えば、なぜ来た道を単に戻らなかったのか。
俺は「帰りは逆側から出よう」と思い、
来た方向とは反対側の新道との合流地点に向かった。
1台の車も通らない道を、ゆっくりと走った。

333 : 動物たちの試練4 : 2012/06/04(月) 21:59:26.80 ID:/DXG8eQp0
路面にはうっすらと雪が積もっていたし、滑るかもしれない。
そう考え、時速20~30キロくらいで走っていた。
カーブの多い山道を走らせていると、突然目の前にシカが現れた。
多少驚いたが、かなり遅いスピードだったので
慌てて急ブレーキをかけることもなく余裕を持って車を止めた。
しばしフロントガラス越しに見つめあうと、
シカはガードレールを飛び越え沢に消えていった。

336 : 動物たちの試練5 : 2012/06/04(月) 22:02:11.88 ID:/DXG8eQp0
俺はなんとなくその情景が気になり、エンジンを止めて車から降りた。
全く人気のない旧道は恐ろしく静かで、ほぼ無風の中雪だけが降っている。
何故かとても不思議な気持ちになり、あたりを見回したときに「ソレ」を見つけた。

走ってきた方向に目をやると、路面に積もった雪にタイヤの跡が付いている。
だが、よくよく見ると付いているのはタイヤの跡だけではなかった。

345 : 動物たちの試練6 : 2012/06/04(月) 22:38:05.77 ID:/DXG8eQp0
そのタイヤの跡を囲むように、大量の動物の足跡がついていたのだ。
恐らくはシカ、キツネ、ウサギといったこの界隈に生息する動物のものだろう。
その足跡が、何十と付いていた。ぎょっとして辺りを見回すが、
動物など1匹も見当たらない。
そもそも、それだけ大量の動物が付いてきていたのなら
バックミラーに写るはずだが、走行中はそんなものは見なかった。

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