この怖い話は約 3 分で読めます。
全国的にずいぶん雪がふったね。
おれの住んでいる田舎町(はっきり言ってド田舎)も、
ふだんはあまり雪は降らないんだけど、今回はずいぶん降った。
で、2年前の、同じように雪がひどく降ったときの話だ。
84 :血雪 2/7:2006/01/22(日) 21:52:36 ID:oprygqQ10
その日、おれは2階の部屋で一人寝ていた。
おれの家はショボい専業農家で、50代の親父と母ちゃんと、おれの3人暮らしだ。
まだ明け方前だけど、下の階で親父がガダガタなにか音をたてて、
玄関から出ていくのを、おれは布団のなかでうつらうつらしながら聞いていた。
天気予報じゃ大雪になるって言ってたので、
親父はビニールハウスが雪に潰されてないか心配で、
まだまっ暗ななかを見にでかけたんだ。
都会のサラリーマンも大変なんだろうけど、こういうときは農家もけっこう大変なんだ。
もっとも、おれの方はこのクソ寒いなかを付き合う気にはなれず、
親父には悪いけど、そのままぬくぬく布団のなかで寝つづけてた。
ところが、しばらくしたら、家の前へギシギシと早足で雪を踏む音が近づいてきて、
玄関がガラっとあいたかと思うと、ドタバタと家に駆けあがる足音が続き、
親父が電話で「・・・そう●●橋の上、救急車!若い女が首やら手首やら切って血まみれで・・・」と叫んでる。
ただごとじゃないと思って、おれが下に降りて行くと、
親父が血相かえて「橋のうえで女が首切って自殺しかけているから、すぐに戻るぞ」と言う。
おれは慌ててスウェットの上からジャンパーを引っかぶり、長靴に足を突っ込むと、
親父といっしょに、まだ真っ暗で雪の降りしきる表に出た。
親父に、「要領を得ないので説明してくれ」と言うと、親父は歩きながら次のようなことを話してくれた。
85 :血雪 3/7:2006/01/22(日) 21:55:15 ID:oprygqQ10
おれが思ったとおり、親父はビニールハウスを見にいくために家を出たそうだ。
ビニールハウスは、おれの家の近所の、小川に毛の生えた程度の川にかかった、
古いコンクリートの橋を渡った先にあるんだけど、
この辺はド田舎なもんで、街灯は1キロに1本くらいしかなくて、夜は真っ暗闇に近いんだ。
都会の人にはわからないかも知れないけど、ド田舎の夜の暗闇ってのは、ホントに凄いものなんだ。
で、親父が橋の近くまできたとき、その辺に一本だけある街灯の薄暗い光のなかに、
橋の上の欄干の脇で、誰かがうずくまっているのが見えたそうだ。
近づくと、それはコートを着た長い髪の女だった。
親父は、こんな時間にこんな所で何をしているのか、といぶかしんだが、
女が苦しんでいるようなので、心配して「どうしたんですか?」と声をかけたそうだ。
そのとき親父が女の足元をみると、雪のうえにヌラヌラしたどす黒い液体がひろがっているのが見えた。
驚いた親父が女の前に屈みこむと、突然女は苦しそうな呻き声とともに顔をあげた。
目をカッと見ひらいた女の顔は、口のまわりや首のまわりが血まみれで、
右手に女物の剃刀がにぎられていたそうだ。