子どものころの怖い話
鬼伝説の山

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がざがざがざ! 茂みが揺れた。
「やっぱりいるんだ! 俺を狙ってるんだ! 絶対に茂みの後ろにいるんだ!」
「誰が!?」Uが問いただす。
Nが走り出した。
Uも慌てて、そのあとを追った。
俺は傷の痛みと恐怖とで立つこともままならなくて、尻餅をついていた。
そういえば、昔この森には祠があり、怪異が閉じ込められていたと祖母から聞いたことがあった。
茂みは静かになった。
それから葉っぱをかき分けて誰かが出てくるということもなかった。
俺は全身に汗をかきながら、手に絡みついた二人の髪の毛を箱の中に押し込んだ。

家に帰りついたのは夕方だった。箱をベットの上に放り投げ、俺は夕飯も食べることなく、泥沼に沈むように眠りに落ちていた。
次の日、やたらと外が騒がしいと思って外にでると、家の前を幾人もの人が歩いていた。
俺はとある夫婦の会話を耳にした。
「立て続けに子供が亡くなるなんてこりゃ祟りだよ」
「こら、滅多なことをいうもんじゃない」
俺もそのあとをついていくと、Nの家が見えた。
パトカーが何台も群がりそれらを囲むように人だかりができていた。
瞬間悟った。
Nが死んだ。俺は言葉にできなかった。ただ茫然とそこにいるだけだった。
「おい!」
Uが俺の肩をつかんだ。
「Nのやつ、もしかしたら昨日の奴に」
ひどく脅えていた。だが俺はこいつと話す気もおきず、踵をかえした。
「おいお前も体験しただろ! 次は俺たちが同じ目にあうかもしれないんだぞ」
俺は無視して歩き続けた。Uが追いかけてきて腕を掴む。
「俺は死にたくない」俺は我慢できずにいった。
「そんなの知らない、少なくともお前は俺にそんなこという資格なんてない」
俺はまた殴られるかと覚悟したが、Uは下を向いたまま動かなかった。
俺は足早に家に戻った。塀の入り口が見えたところで俺は止まった。

黒い犬がいた。昨日よりも近い。改めてその大きさに鳥肌がたった。
じっとこちらを見ている。
俺はなるべく目を合わせないように裏口から入ろうかと考えていると、その犬が笑ったように見えた。
いま思えば錯覚だったのかもしれないが、そのように見えたのだ。
すると、家のほうから祖母の悲鳴があがった。
俺は即座に駆けだそうとする。
黒い犬は俺が動き出したと同時に、お尻をむけて歩き出した。
俺は横目でそれを見ながら、家に駆けこむ。
何か事故があったのかもしれない。最悪救急車を呼ぶ必要も念頭においた。
「ばあちゃん!」俺は玄関を開けて叫んだ。
だが、誰の返事もなかった。居間の扉を開けた。もぬけのからだった。
俺は訊き間違いかなと息を吐きだした直後、真横から知らない老婆が四つん這いで出てきた。
鳥肌とともに飛び上がった。
しかしよく見れば、祖母だった。
背中をさらけだした状態の祖母を見たことがなかったので判別できなかったのだ。
俺は今更ながらそのあともぴんぴんしていた祖母の手足と腰の頑丈さに感心するばかりだ。
現在は他界し享年九十歳の全てがつまった骨壷はお寺に納骨してある。
そして首だけが動き、見開かれた眼が俺を捉えた。震えながら、
「また邪気が来ておった! しかも闇を必要としないモノじゃ……」と呟いた。
祖母は震えながら、奥の部屋に向かって、また戻ってくると、俺にお札を渡した。
「身を守ってくれる札だ。持っておけ」
俺も不気味な現象を体験していたので、幾分心強く感じた。

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