子どものころの怖い話
鬼伝説の山

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そして、一瞬目について、ふと、また気になった大木の前に俺は立った。
その木が俺の目的に見合ったものだと判断したからだ。
次にリュックを地面に降ろすと、中から数本の釘や金づち、
人型につくった粘土を取り出した。
俺の目的は呪いの実行だった。
今のご時世、大抵のことはググれば解決する世の中であるから、インターネットで情報を集めたのだ。
ターゲットはいわずもがな俺を虐めていたT、N、Uの三人だ。
俺はメモしていた手順を確認しながら準備を進めていった。
実行は真夜中だった。
だが、俺の選んだ方法は手間のかかるもので、暗闇の中作業をするのは効率が悪く、
明るいうちに済ませ、あとは人型の粘土に釘を打つだけ、にしておきたかった。
用意した紙片に三人の名前を書き、採取しておいた髪の毛
(うまくいかずTの髪の毛しか取れなかった)を粘土に仕込ませる。
指に付着した白い粉をズボンで拭きながら俺は淡々とこなしていった。
次に俺は木に近づいて釘が打ちやすいか試してみた。
少し力がいるが、容易に粘土を貫いて怨念と共に大木へとつなぎとめることだろう。
俺が眼間の木の幹から体を離した時、視界の異変を感じて固まった。
辺りが暗くなっている。
俺の背筋が凍った。

 

太陽はまだ高い位置にあったはずだった。
よほど葉の量が多く陽光を遮断しているのかとも思ったが、
上を見ればちゃんと隙間があり、薄暗い空には点々とした星がある。
先ほどまで響いていたセミの鳴き声もやんでいた。
携帯で時刻を確認すると十九時を回っていた。
森に入ったのが十四時くらいだった。すると五時間経過したことになる。
おかしすぎる。せいぜい数十分しか経っていないはずだ。俺は改めて周囲を覗う。
それは日も暮れて闇夜に移り変わる、れっきとした逢魔時であった。
俺は祖母の言っていたあの森は異界へ通じておる、
という言葉を思い起こしてゾッとした。
準備もある程度終えていたので、俺はそそくさと道具を片付けると、
リュックを背負った。
早く森を抜けなければならない、祖母の忠告を信じていなかった俺だったが、
いつの間にかそう思っていた。
真夜中にはまた訪れる場所だ。その時は逢魔時ではないし、
憎しみが恐怖を凌駕していたので、決行する決意は揺らいでいなかった。
俺の中で、だんだん祖母に怒られることに不安を覚え始めていたとき、
ふと声をかけられた。
ありえない出来事に俺は飛び上がりそうになった。

 

声のした方を見ると、木々の間に少女が立っていた。
薄いワンピースを着ていて、俺と同世代くらいだった。
暗闇に溶け込む黒髪はまっすぐに垂れ下がり、
肌は彼女を包み込む黒に相反して真っ白だった。
それが不気味さを際立たせている。
「それは呪具?」
透き通った声色だった。
俺はドキマギしてしまい、コクリと頷くことしかできなかった。
不覚ながら俺のタイプの顔をしていたのだ。
俺は少女に質問されて、リュックを見やったが、おや? と思った。
確かにこの中には釘や粘土が入っているが、それらが見えるはずがないのだ。
もしかしたら彼女は俺が呪いの準備をしているところを見ていたのかもしれない。
少し恥ずかしくなってくる。
俺は早く帰路につきたかったが、少女の名前くらい聞いておこうと、
思い切って尋ねてみた。
すると彼女は、
「わたし」と呟いた。

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