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おじさんの説教

この怖い話は約 4 分で読めます。

何年か前の忘年会で、久しぶりに会った友人が話してくれた物を投下しようかと思います。うろ覚えで、多少改変されているかもしれませんが、おおめに見てください。
以下より本題

車会社で仕事をしていた友人は、仕事柄、全国とまではいかないものの
各地を行き来し、毎日疲労をためていました。
久しぶりに休みらしい休みができた友人は、仕事のストレスと疲労から解放されたくて、はっきりとした行先もないまま電車を使って北陸あたりの田舎へ単身旅行に行ったそうです。
旅行といっても、自然に囲まれた場所のきれいな空気を吸うという程度で、
山を登るとか、大きな目標はありませんでした。
バスを乗り継いでただただその近辺を周るだけでしたが、
それでも疲れは十分に癒えたそうです。
不可解な出来事は、最終日の昼下がりに起きました。

342 :本当にあった怖い名無し:2015/01/11(日) 19:15:04.42 ID:oBQjhH/GF
バスを降りて、ベンチでも探してそこで弁当にしようと、
古臭い小屋を構えたバス停で降りて、そこで昼食をとることにしました。
バスを降りてみると、車体の高さがからでは見えにくい位置に、
おじさんが座っていました。軽く挨拶でもして、
何かこの辺の話でも訊こう。
友「こんにちは。」
爺「・・・。」
挨拶をしても、相手は黙り込んだまま。
帽子を深くかぶって下を向いているせいで顔はよく見えません。
友「あの~。すみません。この辺で何処か景色のいい場所とか・・・」
突然、友人の言葉を遮るように、
爺「どうした若造?こんな暑いのに長袖なんか着て。」
昔話を読んでよく想像するような、優しい老人の声で
そう言ったそうです。
しかし、今は秋から冬に移ろうとしている頃。それなのにおじさんは
半袖のシャツに短パン、足にはサンダルという格好でした。
ここで既に友人は霊的なものと感づいていたらしく、
服装のことにはあまり触れなかったそうです。
友「この辺で、いい景色の場所とかありませんか?」
爺「あぁ、知っとるよ。なんやったら、案内しちゃろうか?」
親切に頷いてくれたおじさんは、
それでもまだ帽子を深くかぶり、
うつむいた状態。
でも見えない口から聞こえてくる声は、確かに元気が溢れていました。

343 :本当にあった怖い名無し:2015/01/11(日) 19:36:49.10 ID:oBQjhH/GF

昼食を済ませ、食べている間におじさんとの会話も弾み、
おじさんは友人を、滝がよく見える場所まで案内してくれたそうです。
爺「ここらでは一番、綺麗なとこだって、ここらをよく知る
人らは口をそろえて言う。何より、この滝には、
毎年除夜の鐘が鳴ると、豊穣の神さんが降りてくるって言われとる。
皆それを信じて、確かな方法もないんだけど、何かしらの祈りをささげに、
毎年ここに来るんだ。わしが見てきた限りじゃ、それがきっかけで生まれた、
目覚ましい発展っちゅうのは、なかったもんだがなぁ。」
友「そうなんですか…。」
確かにきれいな景色でした。岩壁を力強く流れ落ちる水と、
それを覆うように岩壁から生えた植物。
どうしてもそれをいつでも見れるものにしたくなって、
使い捨てのカメラを鞄から出して滝に向けたとき、
爺「やめろ」
小さいながら、荒らげた口調でおじさんが言い放ったそうです。
爺「この自然の産物の価値が落ちるじゃろうて。おぬしが眺める目的ならともかく、誰かに見せびらかすつもりなら、やめたほうがいい。
こういうものは、本物を見るのがいちばんなんじゃ。
紙切れに写ったそれはしょせんただの偽者だ。
豊穣の神さんは、そんなものも好きじゃぁないって言われとるしな。」
すっかり圧倒されてしまった友人は、家に帰る前に、
礼を言おうと、おじさんのほうを見たのですが、
音もなく、おじさんはいなくなってしまったそうです。

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