この怖い話は約 3 分で読めます。
今30の俺が小学生だった頃の話。
夏休みの夜はしょっちゅう親父とイカ釣りに行っていた。
夜8時ぐらいから釣りを始めて、夜11時ごろには家に帰って、
釣果のイカを砂糖醤油で甘辛く焼いて食べるのだ。
俺は親父とイカ釣りに行くのが大好きだった。
釣り場は近所の港にある、沖に向かって伸びる堤防だった。
子供の体感的には長さ500mぐらいあったと思うが、今見たらもっと短いかもしれない。
堤防の途中には『進入禁止』と書かれたフェンスがあったけど、
フェンスはちょうど堤防分の幅しかなかったから、横から簡単に越えられた。
その先が俺らの釣り場だった。
夜まで起きていて良い&ほんとは入っちゃいけないところに入れるという非日常感に、
当時の俺はワクワクしてしょうがなかった。
親父は『お前を連れてくると良く釣れるんだ』と言って笑ってくれた。
何の根拠もないけど、子供ながらに誇らしく嬉しいもんだった。
472 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/01/20(火) 21:39:35.97 ID:KzUJXmBM0.net
ある夜のこと。その日も親父に連れられてイカ釣りに向かった。
軽トラで田舎の県道を20分ほど走って、いつものさびれた漁港に入っていった。
水銀灯のオレンジの光で港はぼうっと照らされていたけど、
堤防の方向は明りもなく暗かった。
軽トラを駐車して、堤防に向かった。
暗いけど、月明りでなんとなく周囲は見えた。
堤防を進む間、波がパコパコと堤防の下を叩いて、フナムシがサワサワと散っていく。
分かる人には分かるだろうか。たまんない非日常感である。
堤防には誰もいなかった。
親父はイカ釣りに使う疑似餌を糸に付け、俺に竿を持たせ
キャスト(投げる)させてくれた。
俺はすぐに海底に疑似餌を引っかけるもんだから、
俺の役割はキャストだけで、巻き取るのは親父だった。
俺が投げ、親父が巻く。たまにイカがかかると俺に竿を持たせてくれる。
そんな釣りをしていた。
473 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/01/20(火) 21:45:13.22 ID:KzUJXmBM0.net
そうこうしてイカが2匹釣れた頃、
「ラジオ忘れた。車からラジオ持ってくる」
親父が言い、海に落ちるから歩き回るなよと強く言い含められた。
竿を預けられた俺は、任せろと言わんばかりの態度で親父を見送った。
しばらく経って、ぼけーっと寝っ転がって星空を見ていた俺は、
視界にチラつく明りと足音に気付いた。
親父かぁ~…?思ったより早いな~…と思いながら向き直ると、
顔をライトで照らされた。
「……………釣れるの?」
冴えない風貌の若い男が2人立っていた。
太った男とガリガリの男だった。
「……………2ひき釣れた」