洒落怖
老人ランナー

この怖い話は約 3 分で読めます。

昨年の夏のできごと。

埼玉は35度を超え、まさに酷暑であった。その日の午後、俺は荒川の土手でジョギングをしていた。
いつもならジョギング渋滞も起きかねないほど、ジョギング愛好家の人々で土手のコースは賑わっているのだが、
やはりこれだけの酷暑もあって、すれ違う人、追い抜く人は、両手で数えられるほどしかいなかった。

そんな中、ある人物の後ろ姿が俺の目に留まった。それは俺の先を走るご老人ランナーである。
そのご老人ランナーは、現にこの暑さの中を走れるくらい元気は元気なのだろうけれども、
にしても、丸まった背中に、早歩きしたほうが早いんじゃないかと思えるほどヨタヨタと走るその姿に、
「この暑さの中、よく走るなぁ。というか大丈夫なのか?」と心配になった。

もちろん、そんなヨタヨタのペースで走っているから、俺はあっという間に差を縮め、追いついてしまった。
俺は心配しながらも、でも赤の他人に気軽に声をかけるような性格ではないので、そのまま無言で追い抜いた。
でも、やっぱりご老人が気になったので、追い抜いた後、一息置いてから振り返って見たんだ。
たぶん追い抜いてから1分も経ってなかったんだ。なぜそんなことを言うかって?
…だって、追い抜いたはずのご老人がいなかったんだもの。

436 本当にあった怖い名無し sage 2012/08/13(月) 23:57:54.65 ID:bxTpLVQp0
ジョギングから汗だくで帰ってきた俺は、とにかく汗を流そうとシャワーを浴びることにしたんだ。
あまりの暑さに相当ヘバっていたようで、もうフラフラになりながら、浴室に入っていったんだ。

とにかく火照った体を冷やさないと、と思い、シャワーは冷水のまま浴びることにしたんだ。
まあ冷水といってもこの暑さだから、冷とは言えない温い水だったが、
それでもこの暑さを走りぬいた体をクールダウンさせるには、十分な冷たさだった。

「は~っ!気持ちいい。生き返るわ」それはもう頭からジャバジャバとシャワーの冷水を浴びまくった。
顔や胸、両腕に背中、腹に両足と、体中を万遍なく冷水を浴びた。

顔に浴びた水を手で拭って目を開けた、その時。
一瞬、視界の隅で何か光ったような気がした。
とっさにその方向へと視線を向けると、とくに何もなかった。
ただの気のせいか、そう思った。
しかし、体では何か感じていたのか、胸の鼓動が増していった。

浴室から出て、体を拭き、居間に戻る。廊下を歩いている時、背筋に悪寒のようなものを感じた。
その悪寒は、後ろから誰かに見られているような、いや、背後に誰かがいるような
…いやいや、考えすぎか。この時の俺はまだこの後の出来事を予想だにしていなかった。

「あっ」俺はこの現象と結び付けられそうな出来事を今、急に思い出した。そう、あのご老人…。

この怖い話にコメントする

老人ランナー
関連ワード