洒落怖
僕だけ見えない

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434 本当にあった怖い名無し sage New! 2006/10/28(土) 03:11:08 ID:CJLmAZrh0
「僕だけ見れない」

以前、僕の両親は目の前で車とバイクの衝突事故を見たという。その現場は悲惨だった。
父と母の目の前で、バイクはクルマと衝突し、そしてバイクの人は吹っ飛んで行った。
そしてそのままピクリとも動かず、赤い血がアスファルトを塗らしたそうだ。
当時母は妊娠していて…つまり、僕がお腹の中にいたので、父は母の様態を気遣ったそうだ。

「怖い話だなぁ」
僕は呟く。
場所は車の中。父が運転席、母が助手席、僕が後ろ座席。
3人で週末の買い物に出ていた。

関係ない話だが、僕は車に酔う。酷く酔う。嘔吐を堪え咳き込む位酔う。
他の乗り物は平気なのに。
しかしその日に限って、僕は全くと言って良いほど酔わなかった。
気分もいい。ぼんやりと前の車線を眺めている。
と、

う……
不意に、胸がムカムカした。いつもする様に、窓にもたれ目を瞑り、しばしその不快感をやり過ごし、
「「あ、」」
途端、父と母が気の抜けたような声を出した。
「え?何?」
僕は飛び起きる。
「今…車とバイクが衝突して……人が…ぽーんと飛んでいった…」
「え!?」
慌てて振り返ったが、すでに現場は、僕の目からは見えなかった。
気が抜けたように、僕は窓にもたれ掛かる。
嘔吐感は、もう無かった。

頭の中では、スピンする車、大破したバイク、そして、
血溜まりの中にいる動かない人間が見えた。

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