Categories: 洒落怖

炎と氷

この怖い話は約 4 分で読めます。

912 炎と氷 ◆cmuuOjbHnQ sage New! 2007/11/23(金) 06:03:49 ID:kXMhFsZQ0
俺は前日のマサさんの指示通り、動揺する気持ちを抑えて道場へ向かった。
マサさん正面に胡坐で座ると、マサさんは俺の目の前、50cmくらいの所に掌を広げた。
マサさんは俺に「何が見える」と聞いた。
マサさんの掌が何か透明なベールのようなもので包まれているのが見えたのでそう伝えた。
「これはどうだ?」顔に熱気を感じたので「熱いです」と答えた。
その次は冷気を感じたので「冷たいです」と答えた。
マサさんは特定の指から発する『気』を長く伸ばしたり、気の『色』を変える度に「これはどうだ?」と聞き、俺はそれに答えた。
ふーっと息を吐いてから、マサさんは俺の肩を叩いて「よかったな、成功だ」と言った。

マサさんは俺に様々な注意を与えた。
最も重要なものは「丹田から気が溢れても尾?に気を流し込んではいけない」というものだった。
ヨガの行者などは呼吸法やその他の行で集めた「気」を尾?に目一杯溜め込み、気道を一気に駆け上がらせるらしい。
しかし、持戒や瞑想、宗教的な「行」を修めて「煩悩」を滅却してからでないと気が滞り、発狂したり命を落とす危険があるらしい。
マサさんの行った「処置」は丹田に「気」を取り込む為に「気道」を開けるものだった。
「気道」を開く作業は、通常の修行により安全を確保しながらだと最低5年から10年掛る過程らしい。
しかし、それを短期間で終らせるために、危険な薬物を使い、鍼灸により経絡を操作し、無理やり気道に「気」を送り込むと言う博打を打ったのだ。
個人の「丹田」の強さ、キャパシティーにもよるが、丹田に溜め込める「気」の量には限度がある。
日本人は丹田が異常に強い民族らしい。
それに俺は空手やその他の「力」を使うスポーツを色々やっていた。
大きな力を出す時、手足の筋肉や腹筋・背筋ではなく「丹田」を特別な訓練もなしにしっかり使っているのは、マサさんが知る限り日本人だけだそうだ。
俺の処置が成功したのは丹田が強かったからだと言う事だ。

913 炎と氷 ◆cmuuOjbHnQ sage New! 2007/11/23(金) 06:04:38 ID:kXMhFsZQ0
丹田から溢れた気は性器の付け根を通って尾?に導かれる。
尾?に導かれた気が臨界量を越えると爆発的に背骨の中の気道を駆け上がるらしい。
しかし、世俗的な煩悩にどっぷり浸かった通常人にとっては、それは命取りになるので避けなければならないのだ。
ただ一つ、尾?から貯まった気を抜く方法がある。
それは、女と交わって精を放つ事だ。
尾?に蓄えられる気は「性エネルギー」なのだ。
尾?から気が背骨を登った時、俺が強い性的快感を感じたのはその為らしい。
多くの宗教で、修行者にとって「姦淫」が禁戒となるのは、「悟り」に必要な性エネルギーの損失を防ぐ意味もあるらしい。
だが、裏道を行く者は何処にでもいる。
女と交わって「性エネルギー」を奪い取って取り込む技法が存在する。所謂「房中術」だ。
性器を通して女から盗んだ気を丹田に送る。
だが、「性欲」は人間の持つ「煩悩」の中で最も強いものの一つであり、気の上昇時に命取りとなりかねない諸刃の剣である。
それ故に、邪道・邪法とされるらしい。
また、直接尾?ではなく丹田に気を送り込むのは、女は「性エネルギー=生命力」を本能的に引き込む力が強いからだ。
気の漏出を防ぎ、溜め込んで置く力の弱い尾?に接続すると逆にエネルギーを奪われてしまうのだ。
ヨガの行者や房中術を使う連中は「性器の付け根」を通して丹田から尾?へ気を圧送するらしい。
「性器」の部分は「気」を「性エネルギー」に変換して尾?に送るポンプの役割をするということだ。

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