Categories: 洒落怖

見ててみ

この怖い話は約 3 分で読めます。

374 「見ててみ」1 sage 2007/10/19(金) 15:39:55 ID:HFSGV9fR0
昨日投稿していた者です。
自重します…と言いながら再度登場失礼します。
これで本当に最後にしておきますね。

うちの父親は陽気な人である。
ぱっと見、ヤーさんもも引くような強面の巨漢、しかも柔道有段者で恐ろしげなイメージを持つ人ではあるが、
中身はなんてことはない、ただの陽気なおっさんである。怒ると怖いが。

父は昔から霊感があるらしく、世の中の常識から外れた怪現象を目撃する事が多々あった。
そして、私自身にもそんな父の特異体質は遺伝したらしく、昔から不思議な物を見る事がよくあった。

さて、私が小さい頃から、父は自分の子供をからかって遊ぶ事が好きだった。

焼肉屋にご飯を食べに行くと必ず。
「ほら、窓の外見ててみ。今からそこを、これからさばかれる牛が逃げていきよるから」
と言って窓の外を指差した。

小さな私は当然のように父の言葉を信じ、わくわくしながら窓の向こうを見続けるのだが、
牛が逃げていく様を見る事は一度もなかった。

またある時は、回転すし屋の水槽でゆうゆうと泳ぐブリを見て、小さな弟にこう言った。
「よう見てみ、あの魚な、あの尻尾の所から電池入れるんやで。」

「電動!?」という私のツッコミに、カウンターの向こうで働いていた職人さんが堪え切れずに噴出した。

376 「見ててみ」2 sage 2007/10/19(金) 15:41:18 ID:HFSGV9fR0
ある日、そんな陽気な父と夜中にドライブする機会があった。
用事で帰りが遅くなり、時刻は既に午前1時を過ぎていた。

県道を時速90kmで飛ばす車の中で、特に会話もなくラジオを聴いていたら、父が突然口を開いた。

「見ててみ、 今から女が飛び降りるから 」

父の言葉についていけず、私が「は?」と思っていると、家の近くにある、それなりに大きな川に架かった橋に車が差し掛かった。
進行方向左手の歩道に人影が見える。今は距離が遠くてよく分からないが、車はどんどん人影に近づいていく。

肩にあたるぐらいの髪の長さで、茶色いスカートを穿いた女の人だった。

どんどん車が近づいていく。もう顔もはっきりわかる。

「あ」

一瞬だった。

女の人は軽い動きで橋の欄干を超えて、階段を下りる見たいな動きで橋の下に消えた。

378 「見ててみ」3 sage 2007/10/19(金) 15:42:08 ID:HFSGV9fR0
「っ父さん!!!」

私はパニックに陥り、運転席に座る父の肩をバンバン叩いて車を停めるように懇願した。今考えれば危ない事である。
しかし投身自殺を目撃してしまったのだ。それどころではない。早く救急車を呼ばなければ。
しかし父は私の猛攻を無視して、走り続けながら落ち着けと言う。

「落ち着けるわけ無いやろ!!早く救急車呼ばなあかんやん!!!」
「呼んでも意味無いで、アレはもう死んでるから」
「そんなん分からんやんか!まだ生きてるかも知らんやろ!?」

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