Categories: 洒落怖

逆吸血鬼と下水処理場跡

この怖い話は約 3 分で読めます。

537 逆吸血鬼と下水処理場跡 sage 2008/08/31(日) 18:34:33 ID:YaF8J6x30
「済んだことだし。実際にしたわけじゃないんだから、いいよ」
俺は何故か不思議と怒る気にはなれなかった。
それは予想外の事態に二人がかわいそうなくらいに怯えていたからだろうか。
特にスネ夫の怯えようといったら、普通ではない。
たしかに悪戯のつもりが危うく殺人犯になりかけていたのだから、当然といえば当然なのだろうが。

 ジャイアンと一緒に座っていたスネ夫は建物の中に居た時の俺以上に顔を真っ青にして座っていた。
「スネ夫どうしたんだよ?」
その様子があまりに気になったので俺は声をかけた。
「僕が話したことは嘘だったはずなんだ」
スネ夫はポツポツと語りだす。
何かが変だ、直感でそう思った。
「全部僕が思いついた作り話で、自信はかなりあった」
「そうだな、俺は最初からちゃんと分かってたよ」
俺はうなずく。
「嘘のはずなのに・・・・・・でも見たんだよ」

水の中に人がいるのを

「水が張ってあるという時点でおかしいとは思ってた・・・・・・」
スネ夫は顔を上げた。
建物の奥をじっと見つめていた。
「またまたそんな与太話かよ。今度は信じないからな」
内心ヤヴァいくらいビビリながらも、自分は平静を装った
恒例のスネ夫トークなんだと思った。
スネ夫は本当に話し方がうまい。
何もこんなときにそんな話をしなくてもいいじゃないか。
それも計算づくなのだろう。
だから最高に怖かった。
本当に100分の1でもあればいいなと思うよその才能。
「横井、実は俺も見た」

538 逆吸血鬼と下水処理場跡 sage 2008/08/31(日) 18:35:19 ID:YaF8J6x30
俺は油を差し忘れた機械のように後ろを振り返る。
正人がスネ夫と同じくらい真っ青な顔をしていた。
「自分もはじめは勘違いかと思ってた。勘違いかと思ってたんだけど、スネ夫も見たのならあれは勘違いじゃなかったんだ・・・・・だって」

水が右手を形づくって水面から出てきてたんだよ

「・・・・・・」
それは初耳だった。
少なくとも、

え?でも俺はそんなの見てないぞ・・・・・・
何だよ?皆で俺をびびらせやがって!
もう騙されないぞ、そんなのあるわけねえよ。
ここはただの下水処理場なんだからな。
いい加減にしないと怒るぞ。
絶対確かめになんか行くもんか!!

俺はそう思ってた。
「え?でも俺は・・・・」
そう口に出そうとして

ゴボン

という音、たとえるなら水の底から巨大な気泡が上がって表面で弾けたかのようなそんな音が聞こえた。
建物の廊下の先、例の地下室への入り口から。
「・・・・・・」
聞き違いようがない。
全員が一斉に振り向いたのだから。
俺たちは顔を見合わせて、その後全速力で下水処理場から脱出した。

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bronco

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