Categories: 洒落怖

キャッチアンドリリース

この怖い話は約 3 分で読めます。

588 本当にあった怖い名無し sage 2009/07/25(土) 14:28:21 ID:fKVojrHb0
1/4
釣り好きの叔父さんから聞いた話

叔父さんは紀伊半島によく渓流釣りに行っていた。
その日も林道から3時間程上流に登ったところにある穴場に行った。
途中10メートルくらい落差のある滝なんかも登る。
穴場はシーズン中いつも入れ食い状態らしいが、その日は一匹も釣れない。
諦めかけた時一匹の大物がかかった。
50cmはあろうかというイワナだった。
叔父さんは大喜びしたのもつかの間、イワナの体を見てびっくりした。
体がぐにゃりと曲がっていた。
奇形は良く釣り上げるが、こんなにひどいのは初めてだった。
こんな体でここまで大きくなったのに、殺してしまうのはかわいそうだと
イワナをそっと逃がしてあげた。
「あれはキリクチやった、きっと主やな」
紀伊半島だけに棲むイワナで絶滅寸前らしい。

589 本当にあった怖い名無し sage 2009/07/25(土) 14:30:03 ID:fKVojrHb0
2/4
だいぶ薄暗くなってきたので、その日の成果は諦め沢を降る。
来がけの難所である滝まで来たとき、もう辺りは薄暗くなっていた。
叔父さんは大きな岩に持っていたロープを回し崖を降りはじめた。
普段そんなことはぜず、慎重に足場を探しながらゆっくりと降りるらしい。
懐中電灯の類を持ってきていなかった叔父さんは、
こんなところで一晩過すのはまっぴらだと横着した。
下まであと3~4メートルというところで、
引っ掛けていたロープが外れたらしく落下。
ゴツゴツとした岩場に着地し足に激痛が走る。
あまりの痛さに、これは間違いなく骨折してると思った。
周りに落ちている枝切れで足を固定し、なんとか川を降りようとしたが、
真っ暗な中、しかも片足では大して進むこともできず、
諦めて川岸に座り込んだ。

590 本当にあった怖い名無し sage 2009/07/25(土) 14:31:33 ID:fKVojrHb0
3/4
睡魔か空腹か骨折の痛みのせいか、意識がもうろうとしている中、
何かが叔父さんのすぐ近くにいることに気付いた。
フンフンフン フゴー フンフン フゴー
それはしきりに叔父さんの臭いを嗅ぎまわっていた。
牧場の牛を臭いを更に酷くしたような獣の臭いが鼻をつく。
クマや!死んだふりしてもあかん!
そう思ったが、体を動かすことも目を開けることもできなかった。
しばらくその獣は叔父さんの周りを回っていたが、
突然足をぐいっと持ち上げられたかと思うと、
ゴツゴツした川原を引きずられだした。
体中を岩に何度も打ちつけられ、
この後自分が食べられることが分かっていながらも、
痛いがな、もうちょっと優しくしてくれ
などと思っていたところで記憶がなくなった。

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