Categories: 洒落怖

狐の嫁入り

この怖い話は約 3 分で読めます。

26 1/4 sage 2009/07/03(金) 02:18:21 ID:NrEeA73C0
近所に二つ年上の女の先輩がいた。
勉強は出来るんだけど、それ以外はまるで駄目な上に、異常に空気が
読めなかったり、他人の感情が理解できないときがあったりと、コミュニケーション能力に少し問題があって学校ではずっと孤立していた。
それでも、いつもヘラヘラと笑っているような人だったけど、内心ではそれなりに思うところもあったみたいで、幼馴染の俺には何かと理由をつけては頼ってきた。

家でも何となく疎まれていたみたいで、家族も先輩の事は俺に任せて
おこうと考えていたようだった。
そんな関係は先輩が先に中学に上がっても続いて、それがなっていた俺は、
わざと嫌われようとして、頼られる度に代償として胸揉ませろとかキス
させろとか迫ってみる事にした。もちろん本気じゃなかったし、最初は
先輩も笑って相手にしなかったのだが、俺が面倒がっているのは本当だと
気づくと、次第に言う事をきき始めた。
現金なもので、ご褒美が出るとなると、今度はこっちから先輩に応える
ようになって、むしろ、それ目当てで向こうの家に入り浸っていった。

先輩の家族も関係が変わった事には気づいたようだったが、厄介者を引き
受けてくれるなら、という感じで半ば黙認状態だった。ただ、先輩の祖母
さんだけは違っていて、居合わせると胡散臭げな態度をとるし、監視する
ような素振りも見せた。
この祖母さんも変わった人で祖父さんを戦争で無くしてからは、稲荷信仰が
全てという生活をしていた。その稲荷も正式に勧請したものではないのだが、
事ある毎にお告げだ何だと家族や周囲に迷惑をかけるので、こちらも厄介者
扱いをされていた。でも、同じような立場の先輩は気にかけていて、普段は
かなり無茶な事でも受け入れてくれるようになっていたのに、祖母さんの目が
あるときだけは、やんわりと拒否してきた。それでも無理に迫ると先輩は断り
きれない場合が多かったのだが、最後の一線だけは絶対に譲ってくれなかった。

27 2/4 sage 2009/07/03(金) 02:19:04 ID:NrEeA73C0
高校に上がって、さすがに我慢できなくなった俺は、ついに先輩を留守宅で押し倒してしまったが、祖母さんが寸前に帰宅したせいで未遂に終わった。
レイプに失敗して俺が拗ねていると、先輩は妙なことを話し始めた。
自分はいずれ狐の元に嫁入りをする。だから、君の言うことは何でもきいて上げたいけど、最後までするだけのはどうしても駄目。

よく話を訊いてみると、先輩は難産で危なかったのを、祖母さんが稲荷に、いずれ嫁に差し出すからどうか無事生まれるようにと祈ってくれたおかげで、今ここに生きていられるのだという事だった。
普段は何があってもぼんやりしているか、笑っているかの先輩があまりにも真剣にそう言って拒むので、その後、俺は無理矢理にしようとはしなかった。気味が悪いと思わなくもなかったが、今さらながら先輩をマジで好きになりかけている自分に何となく気づいてしまったというのも、その理由の一つだった。

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