洒落怖
ヒッチハイク

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やがて男は店を出た。そろそろ交代の時間なので、カズヤの所に行こうとすると、駐車場でカズヤが男と話をしていた。
「おい、乗せてくれるってよ!」
どうやら、そういう事らしい。俺は当初は男に何か気持ち悪さは感じていたのだが、
間近で見ると、人の良さそうな普通のおじさんに見えた。俺は疲労や眠気の為にほとんど思考が出来ず、
「はは~ん、アウトドア派(キャンピングカー)だからああいう帽子か」などと言う良く分からない納得を自分にさせた。

キャンピングカーに乗り込んだ時、「しまった」と思った。
「おかしい」のだ。「何が」と言われても「おかしいからおかしい」としか書き様がないかも知れない。
これは感覚の問題なのだから…ドライバーには家族がいた。もちろん、
キャンピングカーと言うことで、中に同乗者が居る事は予想はしていたのだが。

父 ドライバー およそ60代
母 助手席に座る。見た目70代
双子の息子 どう見ても40過ぎ

840 その5 sage 2009/12/24(木) 22:16:30 ID:NNdtlw3F0
人間は、予想していなかったモノを見ると、一瞬思考が止まる。
まず車内に入って目に飛び込んで来たのは、まったく同じギンガムチェックのシャツ、
同じスラックス、同じ靴、同じ髪型(頭頂ハゲ)、同じ姿勢で座る同じ顔の双子の中年のオッサンだった。
カズヤも絶句していた様子だった。いや、別にこういう双子が居てもおかしくはない、
おかしくもないし悪くもないのだが…あの異様な雰囲気は、実際その場で目にしてみないと伝えられない。
「早く座って」と父に言われるがまま、俺たちはその家族の雰囲気に呑まれるかの様に、車内に腰を下ろした。

まず、俺達は家族に挨拶をし、父が運転をしながら、自分の家族の簡単な説明を始めた。
母が助手席で前を見て座っている時は良く分からなかったが、母も異様だった。
ウェディングドレスのような、真っ白なサマーワンピース。顔のメイクは「バカ殿か」と
見まがうほどの白粉ベタ塗り。極めつけは母の名前で、「聖(セント)ジョセフィーヌ」。
父はちなみに「聖(セント)ジョージ」と言うらしい。
双子にも言葉を失った。名前が「赤」と「青」と言うらしいのだ。
赤ら顔のオッサンは「赤」で、ほっぺたに青痣があるオッサンは「青」。普通、自分の子供にこんな名前をつけるだろうか?
俺達はこの時点で目配せをし、適当な所で早く降ろしてもらう決意をしていた。狂っている。
俺達には主に父と母が話しかけて来て、俺達も気もそぞれで適当な答えをしていた。
双子はまったく喋らず、まったく同じ姿勢、同じペースでコーラのペットボトルをラッパ飲みしていた。
ゲップまで同じタイミングで出された時は、背筋が凍り、もう限界だと思った。

842 その6 sage New! 2009/12/24(木) 22:17:48 ID:NNdtlw3F0
「あの、ありがとうございます。もうここらで結構ですので…」
キャンピングカーが発車して15分も経たないうちに、カズヤが口を開いた。
しかし、父はしきりに俺達を引きとめ、母は「熊が出るから!今日と明日は!」と意味不明な事を言っていた。
俺達は腰を浮かせ、本当にもう結構です、としきりに訴えかけたが、
父は「せめて晩餐を食べていけ」と言って、降ろしてくれる気配はない。
夜中の2時にもなろうかと言う時に、晩餐も晩飯も無いだろうと思うのだが…
双子のオッサン達は、相変わらず無口で、今度は棒つきのペロペロキャンディを舐めている。

この怖い話にコメントする

  • 匿名 より:

    創作乙

  • 旦那被爆三世 より:

    全然こわくない(笑)

  • 名無し より:

    めっちゃ怖い話をありがとう。
    布団に入りながら見てたけど、寝れたは寝れたんだけど布団から怖くて出れなかった。

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