Categories: 洒落怖

テンポポ様

この怖い話は約 3 分で読めます。

「……さぁ」

680 本当にあった怖い名無し sage 2011/07/27(水) 18:13:58.94 ID:MtTpUC540

いよいよ少年との間が手を伸ばせば届く距離となった時、
お社を出るときに聞こえた太鼓の音が、地鳴りのようにして俺の耳に届いた。
少年から目を離し、後ろを振り返ると腐ったような締め縄と、麓で太鼓を叩く大人達の姿が見えた。
いつの間にか、お山を出るまであと少しの所まで来ていたのだ。
俺は、必死の思いで身を翻すと、締め縄をくぐって大人達の待つ麓へと一気に駆け下りた。

俺がお山を抜けると、大人達は何を思ったか、憔悴している俺に向かって大量の酒と塩をぶちまけた。
そして、模造紙のような巨大な紙で俺を包むと、乱暴に軽トラックの荷台に俺を放りなげた。
反抗する気力もないまま、荷台で揺られ、寒さと空腹を覚えつつ俺は眠りについた。

681 本当にあった怖い名無し sage 2011/07/27(水) 18:16:12.27 ID:MtTpUC540

目が覚めると、俺は自宅のベッドに寝かされていた。
両親に話を聞くと、どうも三日三晩眠り続けていたらしい。
両親は村長と神主さんに「一応覚悟はしておけ」と言われていたらしく、
俺が目を覚ました時は死んだ人が生き返ったように驚いていた。
両親が落ち着きを取り戻したころに、あの山は一体どういったものか尋ねてみたが、
明確な答えはなく、ただ悪いモノが集まるのがあの山。
そしてお前が見たのはおそらくテンポポ様だろうと言ったきり口を開くことはなかった。

あの時、俺の他に参加していたA・B・C・Dについては、俺のように何かに話しかけられたり、
何者かの視線を感じることはなかったそうである。体調が回復した後に俺が村長と村長から聞かされた話しの中では、
俺のようにテンポポ様に話しかけられて戻って来た子どもは、これまで居なかったそうである。
テンポポ様に話しかけられる(=気に入られる)事はそのまま連れて行かれる事を意味していて、
俺の場合は運が良かったのか、テンポポ様の気まぐれなのか良く分らないと言っていた。
その話を聞いて、少しでも天秤が傾いていたら俺はテンポポ様に連れていかれて死んでいたのではないか
と思うと同時に、それを村のしきたりとして自然に受け入れている大人達に対する恐怖と軽蔑の念を抱かずにはいられなかった。

682 本当にあった怖い名無し sage 2011/07/27(水) 18:18:51.96 ID:MtTpUC540
村長と神主さんだった……。

これが、大体十年くらい前の話になる。
その後、俺は何事もなく成長し、高校卒業と共にこれ幸いと村を出た。
成人してからもほとんど村に戻ることは無かったのだが、
この間個人的な事情により久しぶりに村に戻る機会があったので、
親父と元村長にお山について話を聞いて来た。

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