Categories: 洒落怖

猫の死骸

この怖い話は約 2 分で読めます。

近所にある嫌いな場所の話。
そこはJRの線路下をくぐるように作られたトンネルで、右脇に細い歩道がついている。通る時は坂を下ってから
また上るかたちになるので、見通しが悪く昼でも薄暗い。距離が短いからか街灯の類はなく、交通量は多いという
危険な場所だ。

ある日の夕方、近くを通りかかったときに、トンネルの中で泣いている小さな女の子をみつけた。
近くに親らしき人物もおらず、危険だと思った俺は声をかけることにした。

「なんで泣いてんの?」
女の子は俺を見ると、泣きじゃくりながら車道を指差した。
そこには車に轢かれたネコの死骸が転がっていた。
「……君の?」
とっさに出たのはそんな言葉だった。女の子が大きく肯く。涙でびちゃびちゃの大きな目が、無残な亡骸をじっと
見つめていた。
女の子もネコも可哀想だが、とにかくこの子をトンネルから連れ出そうと思った。この子まで車に轢かれるような
ことになってはいけないし、死骸を見続けるのは辛いだろう。
それに、次に来る車がネコの死骸を轢かないとは限らないのだ。そんな光景はとても見せられない。
そうして俺は女の子をなだめ、抱きかかえてトンネルを出た。

外に出たとたん悲鳴があがった。通行人の女性が俺を見て声を張り上げている。
まさかこの子のお母さんか。これは誘拐じゃないぞと憤慨しかけたが、そういうことじゃなかった。

女の子を抱えたはずの俺の腕の中にいるのは、哀れなネコの死骸だった。

bronco

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bronco

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