Categories: 洒落怖

埋められた鳩

この怖い話は約 3 分で読めます。

673 自治スレでローカルルール他を議論中 sage 2010/10/18(月) 20:47:07 ID:ri7Mty6fO

「埋められた鳩」9

「……そこって」
「ホスピスだよ。
向かっている場所はそこじゃないけどね」
チン、という電子音とともにドアが開き、先輩と俺はエレベーターを降りた。
すると、先輩は病室があるほうではなく、階段に向かって歩いていく。
ついていくと、やがて鍵のかかったドアがあった。
先輩は受けとった鍵でそれを開け、ドアをくぐる。
あとに続いた俺は、予想通りの光景をみた。
そこは、屋上だった。
「今は使われていないけどね。それにやはり、病院の屋上は閉鎖される傾向が強いよ。
ホスピスがあるような病院は特に、ね」
「先輩はどうして入れるんですか?」
「ああ、簡単なことなんだけど、下手に禁止にするより許可制にしたほうがいいって判断されたんだ。
特例で、ね」
そして、先輩が屋上の真ん中辺りに立つと、待っていたのかたくさんの鳩が一斉に飛んで来た。
「ほら、それを渡して」
「あ、はい」
先輩はパンの耳を細かく千切りながら、鳩たちにあげていく。
「いつもやっているんですか?」
「隔週一回ぐらいかな」
やがて、異様に高い屋上のフェンスに二人でもたれかかると、先輩は俺の胸ポケットから勝手に煙草の箱を取り出した。
「駄目ですよ、病人が煙草なんか飲んじゃ」
俺はそういって取り返そうとしたのだが、先輩は既に一本抜き取ってくわえてしまった。
「火」
「だから駄目ですって」

674 自治スレでローカルルール他を議論中 sage 2010/10/18(月) 20:49:14 ID:c4CkQu8Q0
5は?

675 自治スレでローカルルール他を議論中 sage 2010/10/18(月) 21:07:42 ID:vnTgOnOe0
はい八宝菜乙

676 自治スレでローカルルール他を議論中 sage 2010/10/18(月) 21:17:25 ID:ri7Mty6fO
番号振り間違えた。

「埋められた鳩」10

「……百年と五十年の差、二秒と一秒の差って、違うと思う?」
「え?」
突然先輩は、そんなことを言った。
「どちらも半分にしただけなのに、多くの人がその本質から目を背けて、長い短いで判断する。
無意味なことに気がつかない。人間は今この一瞬だけにしか生きていないのにね」
いつの間にか、先輩は俺のライターを奪って、煙草を飲んでいた。
「……もう、長くないらしい、この身体は」
深々と煙を吸い込むと、先輩はそう言った。
「医者はもって半年って言ってた。ようするに、余命は大体一年ぐらいかな」
昔、先輩に聞いたことがあった。
医者は余命を短めに宣告すると。理由は、考えるまでもない。
「一年が半年になっても、生きている今が充実していることのほうが大事なんだよ」
「……一本だけですよ」
流石にそんな話をされては無理矢理やめさせることも出来ない。
「さて、この研鑽された知識の蓄積が朽ち果てる前にその話を聞けてよかった。
長くなるが、聞いてもらうぞ」
鳩たちが食事を終え、飛び去っていくのを見上げながら、先輩は静かに話しはじめた。

Page: 1 2 3 4 5 6 7

bronco

Recent Posts

とある民家

1俺が仕事で経験した話をレスし…

5年 ago

奇行

2年前まで大学生してた時の話。…

5年 ago

暗がりの子供

友人の話。  数人で…

5年 ago

祖父と犬

不思議な話なんだけど、3年程前…

5年 ago

黒い服のひと

家族構成ね 妻俺子ど…

5年 ago

百合の匂い

高校2年時の話。 自分、絵の塾…

5年 ago