Categories: 洒落怖

もう一人の女

この怖い話は約 3 分で読めます。

私が勤めている会社の近所でのこと。

残業だったので、時間は夜7時過ぎだったと思う。
デスクで仕事をしていたら、会社前の通りがなんだか騒がしくなった。
女の人のキーキーした声と、笑い声と、男の人の怒声だった。
痴情のもつれか何かかな?と思って、ブラインドを上げて下を見たら(オフィスは2階)
長い髪の毛をポニーテールにしたおばさんが、男2人に組み付かれていて
ちょうど道路に押し倒されたところだった。

ビックリして、とりあえず窓を開けて顔を出したら
男の人たちは「警察!警察呼べ!!」「放火魔だ!はやく警察呼んで!」
おばさんは「ぎひぃーっ、だめなんだぁ~!はーーなーーーせえーーーー」などと叫んでいた。
そのおばさんの金切り声が、喉が破れちゃうんじゃないかと思うぐらい大きくて…
しかも何度も何度も同じ言葉を繰り返すもんだから、怖いし足震えるし
とにかく叫びを止めて欲しくて泣きそうになってた。
でもオバサンは警察が来るとぱたっと黙って、大人しく捕まっていった。
ちなみに通報したのは、オフィスに居たうちの社長。

425 2/3 sage New! 2010/06/22(火) 15:00:26 ID:4OcsQ4Uq0
その長髪ポニーテールのおばさんは、近所では有名なその土地一体の地主の娘だった。
頭がおかしいらしい。
連続放火魔ということで捕まっていったけど、
確かに会社近所の住宅地では度々不審火が出ていた。
ゴミとか犬小屋とか、ポストからはみ出たチラシなんかが燃やされてた。
それから空き地でのあからさまなゴミ焚き火になり、
いよいよアパートの外壁を燃やそうとしたところを現行犯で捕まった。

私がオフィスから見た男の人は、近所の人で組織された自警団の男性たちだった。
後日その人たちが「ご協力ありがとうございました」とわざわざ会社に来てくれたので
そのとき少し話を聞かせてもらった。

自警団の人たちは最初、アパートの塀の中でゴソゴソする人影を見つけたんだって。
で、塀に空いている飾り穴から中を覗いたらオバサンが居て
サラダオイルを手にとって、アパートの外壁にゴシゴシぬりつけてたらしい。
でも、その人たちが言うには、そこにはオバサンの他にもう1人居たんだって。
オバサンの脇で、にこにこ笑う女の人が。
で、その女の人がにこにこしながらオバサンに耳打ちするんだって。
するとオバサンも、同じようににこにこしながら「うんうん」って頷くんだって。

426 3/3 sage New! 2010/06/22(火) 15:01:24 ID:4OcsQ4Uq0
で、塀を回りこんで入り口からオバサンのところへ走って
「なにしてるんだ!」って声をかけた時には、女の人は既にいなかったらしい。
脱兎のごとく逃げ出したオバサンを追いかける時、
オバサンは
「私じゃない!私じゃない!私じゃない!私じゃない…」
「私じゃないいーっだめ!私を捕まえたらだめ!!」
なんて喚きながら走ってたらしい。

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