洒落怖
選ばれた施設

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用があって、家族と一緒にとある施設に行っていた。
ごく普通に楽しんでいたときいきなり館内放送が鳴り出した。
『ご来場中の皆様へ。この施設は、選ばれました。
つきましては皆様にご協力をお願い致します。
尚、協力しないということはできませんので、スムーズに行うため、
暴れずに係員の指示に従ってください』
やけに無機質な女の声だった。
聞いているうちに私たちは、何かがおかしいということに気がつき、
心臓が鷲づかみされているような恐怖を覚え始めた。
選ばれたって何だ?拒否ができないって?このやけに冷たい声は?
暴れることを想定している、このアナウンスは一体…?

放送がまだ終わらないうち、遠くから叫び声が聞こえ始めた。
うわっ、と短く叫ぶ男もいれば、キャアアアーとドラマのように綺麗な悲鳴を上げる女もいる。
うあーーっと低く叫ぶ男もいた。
それから間を置かず、破るように扉を開けて異様な男たちが入ってきた。
何というのだか…名前は知らないが、よく漫画で出るような全身防護服を
身につけ、何人もが駆け寄ってきている。
奥ではその男たちに捕まって暴れている人々が見えた。
彼らは銃などは持っていなかったが、物凄い力で私たちを羽交い締めにした。
暴れる者、泣き叫ぶ者も多く私の家族も恐怖に泣いていたが、
私はそのとき既に、暴れても無駄なのだという気持ちになっていた。
何が起きるのか分からない恐怖に早くも麻痺してしまっていたのかもしれない。
更に奥から、看護師のような女が、緊急患者用の寝台らしきものを走りつつ押してきて、
私たちはそこに寝かせられた。
そのままどこか遠くに連れて行かれた。

382 2/5 sage New! 2010/09/01(水) 11:04:13 ID:xN+Ow1Qj0
途中までは叫び声や泣き声、殴るような音やガラガラというキャスターの音がしていたのだが、
ある部屋に入るととても静かになった。
「では、降りてください」。丁寧な口調で看護師らしき女が言う。
そして私たちは見てしまった。
広い一室に、私たちと同じくキャスターに乗せられた人々が、すし詰め状態で並べられていたのだ。
その姿はまるで芋虫だった。手足を切り取られていたなどという残虐な意味ではない。
色とりどりの寝袋のようなものに入れられていたのである。
(先ほどから、「ような」「らしい」ばかりで漠然としてしまっているが、
正式名称も知らなければ調べる気も起きないのだから仕方がない)
その寝袋らしきものは手だけを出せるようになっていた。
しかし身動きをさせないためなのか、ぐるぐるとテープで全身を巻いており、
その上、目隠しまでついていた。自由になるのは手と口だけ。
けれど喋っているものは少なく、ううう、うう、と呻いて
台の上でがむしゃらに転がるばかり。
無論全員が呻いているわけではなく、嗚咽するものや叱責を受けているもの、
小さく冷たい喋り声(これは、奴らの声だ)もたくさん聞こえてきた。
ともかく芋虫状態にされた人々が、低く呻き、ごろごろと無様に暴れ回っている…
その光景は私に深い恐怖と、そして自分もこれからこうなるのだという絶望を感じさせた。
大勢の人間が必死で暴れているのだ。今思っても、とても恐ろしい光景だった。

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