Categories: 洒落怖

キジムナー

この怖い話は約 3 分で読めます。

あまり怖くないが不思議な話をひとつ。

30年くらい前、小学校に行くかいかないかの頃。

父の実家が鹿児島最南端の某島で、爺さんが死んだというので葬式に。
飛行機で沖縄経由で島に行き、父と激似の島民というか葬儀屋に案内され、はじめてその実家へ。
確か2月で、寒くは無いが、イメージしていた南国には遠く、曇りでどんよりしていた。
当時福岡に住んでいたので、親戚は会う人みな初対面で、ちょっと居場所が無かったのを覚えている。

そこの風習は土葬で、甕に入れるために爺さんが仰向けだが足をちょうど正座する状態でそのまま寝かされていた。
弔問客は皆、爺さんのひざに触る。
婆さんは、方言というか外国語というか、何を言っているか分からないが、
どうやら「ひざに触ると爺さんが喜ぶ」とのこと。
死体に直に触るのをはばかれてか、タオルがかけられている。

まあ、そんなこんなで酒盛りなども経て、こちらでいう通夜はお開きになった。

南方の島の家というと、風通しの問題なのか、ほぼ畳敷きの広場といった風情。
よく見るとふすまの敷居もあり、普段は部屋が区切られるようだが、
人が集まるということもあり、ふすまは全部取り払われ、長い縁側から大きな部屋に仕立てられていた。
そんな広間で、爺さん共々みんなで雑魚寝していた。

917 本当にあった怖い名無し 2010/03/23(火) 11:22:03 ID:vz8Yw0E50
縁側のほうは雨戸が閉められ、うっすらとした常夜灯だけの夜。
遠くから海の音が聞こえる。
20人ほどの親戚一同との雑魚寝で、なんとなく寝付けず、悶々としていた。

何時だったか分からないが、多くの人が寝静まったと思われる頃、
急に、雨戸、窓、玄関その他を誰かが、いや、大勢の人が叩き出したのだ。
ドンドンドンドン、ガシャガシャガシャガシャ
外から声は一切せず、ひたすら大勢の人が叩いている。

当然周りは何事かと起きだすのだが、ザワザワするだけで、騒ぐものもおらず、みな妙に冷静だった。

すると婆さんが一人でずかずかと雨戸に寄り、ガラリと開け放ち、
「hふrひえjsdんしうgf」と方言でわめき散らした。
何やら怒っているようだった。
すると音はピタリと止み、みな安心したようにすぐに寝入ってしまったのだ。

なんだか夢の続きのようで、思わず婆さんに何?と聞いてみた。
婆さんは方言で優しげに頭を撫でながら何か言ってたが、分からない。
そばにいた親戚の女の人が通訳してくれたのは、次のような内容だった。

918 本当にあった怖い名無し 2010/03/23(火) 11:23:50 ID:vz8Yw0E50
「あれはキジムナーだ。
爺さんに会いに来たけど、もう夜遅いから明日にしてくれ、と婆さんが追い払った」
「キジムナーは特に何もしないから寝ていいよ」

水木の妖怪辞典で見知っていたキジムナーだ、とすぐに思い当たった。
それで安心して、そこからすぐに寝入ってしまった。

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