Categories: 洒落怖

道連れ

この怖い話は約 2 分で読めます。

朝の通勤電車をある地方駅のホームでで待ってたんだが、
何気なくベンチに目をやると和服の上に毛皮のオーバーを羽織った爺さんが
深く腰掛けて大きく背もたれにもたれている姿が目についた。
茶色っぽいマフラーをぐるぐる顔にまで巻き付けて、鼻より上しか見えない。
出ている額はすごくしわ深くて薄くなった白髪がきちっとなでつけられている。
自分は5mくらい離れたところにいたんだが、
なぜかその爺さんのことが気になって目を離すことができずずっと見ていると、
電車が入るという駅のアナウンスがあって、
すると爺さんは横に立てかけていたステッキをとると、
右手に持って前方斜めに突き出し、チョンチョンと前に押すような仕草をした。

そのステッキの先には通学の女子高生が一人でいて
寒そうな足で携帯をいじってたんだが、
急にがくんと腰が砕けたようになると、
つつつと前につんのめって、そのまま両手を拡げて線路に落ち、
そこに列車が走り込んだ。
ホームは騒然となって、乗客が列車の下をホームからのぞき込んだり、
駅員も走って駆けつけてきたが、
自分は呆然としてその場を動けずにいたが、
ふと我に返ってベンチを見ると爺さんの姿がない。

その時自分のすぐ後ろから急に声がして、
「お前見てただろ、死神なんかじゃないぞ。
念動力だ。・・・わたしは肺ガンでな、もう長いことはないから、死ぬまでに
若い人をもう何人か道連れにさせてもらうよ。」
と言われた。

bronco

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bronco

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