Categories: 洒落怖

絶叫

この怖い話は約 3 分で読めます。

今から20年前、ある女性が大阪の企業に勤めていた
毎日続く激務に疲れ果て、そろそろ転職しようかと思っていた頃の話である

その企業の社宅の女子寮というのが、山奥の骨董品のようなボロアパートだった
かろうじてユニットバスをつけただけの古アパートを嫌い、その社宅に住んでいるのはその人だけだった
会社が家賃の大半を払ってくれていることと、静かで環境が良かったためだという

ある日、激務を終えて夜中にへとへとになって帰ってくると、自分の部屋に明かりが点いている
おかしいな、消し忘れたのか……と思っていたが、それからもしばし消したはずの部屋の電気が
家に帰って来ると点いていることがあった。会社の総務部に言って点検してもらったが、異常はなかったという

そのアパートには通常の階段の他に非常階段があり、その人の部屋は正面から見て左端にあった
そんなわけで、彼女は疲れ果てて帰ってくるとアパートの左端にある非常階段を使って部屋に帰っていた

その日の仕事も深夜になった。くたびれて非常階段を登り、非常扉を開けると、人がいた
その人を見た瞬間、体験者はぞくっと寒気を感じたという

そこにいたのは女性だった。しかし、知り合いではなかった
見たこともないような物凄い長身の女性で、白い、フリル付きのワンピースを着ていたという
しかもそのワンピースは汚れており、あちこちに枯れ葉がついている有様であった
汚れた白い靴に穴の開いたストッキング、パサパサになった長髪には、すり切れかかったリボンが結ばれていたという

このアパートに私以外の住人はいない、ホームレスだろうか……と、そんなことを考え、
部屋に入ろうとバッグから鍵を取り出した瞬間だった

ひーぃぃいいいいーーー

悲鳴とも笑い声ともつかない絶叫が廊下に響き渡った

544 本当にあった怖い名無し New! 2012/03/12(月) 21:36:48.91 ID:RSoX4Ryt0
体験者は肝を潰してその女を見たという。するとワンピースの女は、一歩一歩こちらに歩み寄ってきたのだという
薄暗い廊下の中で、そのワンピースの女をよく見ると、肌が異様に白く、目の周りは汚れて落ち窪んでいた
その瞬間、体験者はこの女がこの世の者ではないとわかって、背筋が凍りついた

ひーぃぃいいいいーーー

また甲高い声が女から発し、身の危険を感じた体験者は非常扉の外に飛び出た
ゆらゆらと揺れるワンピースの女の影が非常扉の窓に映しだされた瞬間――

バン!

ひーぃぃいいいいーーー

ワンピースの女が非常扉にぶつかる物凄い音が非常階段に響き渡り、同時にあの絶叫が耳を劈いた

(あっちに行って! あっちに行って!)

祈るような気持ちで非常扉のドアノブを握っていると、女の影が窓から離れ、あの絶叫が徐々に遠ざかっていったという
しばらくして、体験者は恐る恐る非常扉を開け、廊下の向こうを見た

まだあのワンピースの女はそこにいたが、こちらに背を向け、廊下の向こうにゆらゆらと歩いてゆく
そのとき、この女の目をかすめるには今しかないという直感が体験者を貫いたのだという
体験者は非常扉から飛び出るや、急いで部屋の鍵をドアノブに差し込み、自分の部屋に入って鍵を掛けた

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