Categories: 洒落怖

カエルの視線

この怖い話は約 2 分で読めます。

今でも忘れられない事がある。
俺が小学5年生だった頃の話なんだけど
授業の一環として、田植え~稲刈りまでの体験学習をやってたんだ。

11月になって、いよいよ刈り取りをする為に
5年生軍団は長靴、軍手、草刈り鎌(刃がギザギザの)
という重装備で土手の砂利道に整列!
先生や農家のおばさんからの注意事項を聞き流していたら
「おい、皮が透明なカエルがいたってよ!」と隣のヤツに耳打ちされた。

大人の難しい話が終わり、子供たちはグループに分けられ
それぞれの担当する区域の稲をシャバシャバ刈り始める。
だが俺は”透明なカエル”が気になって仕方がない。
左手で稲の束を握り、根本に鎌をあてがい腹に向かってグっと引く
ザリザリザリッと乾いた稲の茎がちぎれていく感触。
そして、ゴリっと不思議な感触が俺の右手を伝わってくる。
その時なにが起こったのか俺にはわからなかった。
俺はただ立ち上がり、鎌を取り落とし呆然としてた。
真っ赤に染まった軍手から真っ二つになった小指が見えていた。
不思議と痛みはないのだが、とにかく真っ赤で怖かった。
周りの連中はキャッキャと稲刈りに夢中で、誰一人俺の惨状に気づかない。
集団の中でやたら孤独だったのをよく覚えている。

先生の所へ向かう途中、田と土手を渡す橋として置かれていた
茶色い鉄板の上に4匹の蛙が乗っているのが見えた。
皮は透明ではなく茶色だったが、そいつらはジっと俺を見ていた。

親と共に病院に直行し、何故か車いすに乗せられ3時間待たされた。
滅茶苦茶痛い麻酔を打たれ、小指を12針ほど縫ったらしい。
大人になった今でも俺の左手の小指の爪は割れている。
あれ以来、蛙の視線を感じるんだよなあ。
今度は蛙に気を取られて交通事故とか起こすのか?

bronco

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bronco

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