Categories: 洒落怖

黒い糸

この怖い話は約 4 分で読めます。

466 1/3 sage New! 2009/08/07(金) 08:51:17 ID:oF9h2Cnd0
夏だからこの時期の話をする。
大学時代ちょっとマニアックな専攻だったんで多少マニアックな言葉が出てしまうかもしれない。すまんこ。
一応砕けた形では書く。

数年前、俺は某国公立大でテキスタイルデザイン(布地とか染色、繊維素材の勉強)やってた。
特に俺は機織り(鶴の恩返しのあれの洋物版)が大好きで、織りの課題ともなると染めやプリントよりも
ずっと熱中して作業が出来たし、作品へのこだわりもそいつらより明らかに強かった。
自然と課題制作には時間がかかって、締め切りともなると連日テキスタイル実習室に泊り込むことが多かった。
友達は皆クーラーが効いてない蚊だらけの部屋で作業するのを嫌がって、遅くても22時頃には
帰ってしまうから、深夜から助手のおねえさんが来る朝8時くらいにかけては大体俺一人で作業していた。

3回生の前期末、やっぱり俺は泊り込んでいた。
教室の中でもひときわ大きい、一番奥にある機にはPCが繋いであって、海外の織り専用のソフトを使って
手作業では不可能な変わった織り方をすることが出来るようになってるんだが、その時俺はその機を使っていた。
午前1時過ぎくらいだろうか、さすがに眠くなってきたから2時間ちょい程度仮眠しようと思って
携帯のアラームを3時にセットして床に布をしいて糸を詰め込んだ袋を枕にごろ寝した。
(なんせテキスタイル実習室なもんで、先輩が放置していった要らない布や糸が山ほどある)
暑さと精密作業で疲れていたせいかすぐに眠れた俺は、携帯のアラームが鳴る3分前にバッチリ目が覚めた。
つってもまだモチベーションは戻ってなかったから、準備運動したり、顔を磨いたり、繋いだPCでエロ動画見たり
ちょっと下半身露出したりしてリフレッシュし、さあやるか!と気合を入れて機に向かった。んだが
そこに架かってる見慣れた「作品」の色使いが、なぜかかなり暗く変化していて、思わず「はぁ…?」と声を出してしまった。
そして、なにかあったのかと慌てて駆け寄って間近で見て、更にビックリした。

467 2/3 sage New! 2009/08/07(金) 08:53:25 ID:oF9h2Cnd0
今まで織った数メートルの織物に、なんだか分からない黒い糸のような者がいっぱい織り込まれている。
毛足の長い素材なんか使ってないし、なにより俺は黒を使ってない。
夜中のハイテンションで豪胆になってた俺は、そいつを引っ張り出してみた。それは比較的硬くて太く、縮れていて
なんだか正直…陰毛っぽかった。
陰毛なら良かった。間抜けさで恐怖心もちょっとはまぎれる。しかし、かなり長くて引っ張り出せないものがある所を見ると
これは髪の毛のようだった。陰毛のような凄い癖毛で、ひどく痛んでるのかぶちぶち切れる。
そこで初めてゾッとした。こんなことできるわけがない。毛は横糸として織り込まれているんじゃなかった。
縦糸と縦糸の間に、挟まれる形で毛は入っている。俺の作品は横糸がギッチリ固く詰め込まれていて
織りあがった織物に、縦方向に繊維を挿入するのは繊維の柔軟性やもろさから考えて不可能だ。
絶対に不可能だ。
なんなんだこれは。
怖いのと、どうすればいいのか分からないのとでパニックになった俺は、ひたすらそれを毟り取っていった。
完全に抜け切らず、ぶちぶちと切れる髪の毛が床に散り、作品に食い込んでる分も必死に取ろうとした。
その瞬間、手にかなりの痛みが走って思わず両手を見た。
俺の両手のひらに、蚯蚓腫れが出来て、所々黒いものが縫い目のように出ている。
今、俺が引っこ抜いてた、あの髪の毛で。

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