Categories: 洒落怖

思い出の居酒屋

この怖い話は約 3 分で読めます。

617 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/09(土) 05:06:45.19 ID:MktxOVh90
また聞きで、俺の体験談じゃないから本当かどうかはわからん。

なんとかっていう町で、父親と娘で二人でやっている居酒屋があった。小さいがつまみが旨いと評判の店で地元の人を中心に何人か常連がいた。

その中にAさんという夫婦がいて、トシは初老といったところ。

子供はいなかったが仲のいい夫婦で、週一か週二のペースでその店に通って夫婦水入らずで食事をするのを楽しみにしていたらしい。感じのいい夫婦で、
そのお店の父娘とも気さくにしゃべっていたからよく覚えていたんだそうだ。

そんな夫婦に悲劇が襲った。
なんの病気かは敢えて聞いていなかったが、結構前から奥さんは治る見込みのない、
つらい病気に悩まされていた。
日に日に病状は悪化しているという話だったが、
それでもなじみの店に来れば少しは気が休まるのか来店のペースは落ちながらもちょくちょく二人そろって食事にはきていた。それがある日を境にぱったりと来店しなくなった。

心配していた父娘の耳にほどなくして入ってきたのは奥さんの自殺という最悪の知らせだった。

621 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/09(土) 05:13:14.47 ID:D72AEenG0
大変なことであっただろう。かける言葉も見当たらないが、もしまた店に来てくれれば少しでも慰めになるのではないか・・・。
そんな風に思っていながら月日は流れ、少し記憶からも消えかかっていたときにその夫さんはふらりと店に現れた。もちろん一人ではあったが。
「何よその顔。心配かけちゃった?」
無理に笑顔を作っているのは痛いほどわかったが、思っていたよりも元気そうだ。
「なんにしましょう?」
「最初瓶ビールね。」
「あいよ。」
「コップは二つね。」
父娘は一瞬顔を見合わせた。夫さんはその微妙な空気を察したのか
「あ・・・。いけね、つい癖で・・・。」と頭をかいた。

622 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/09(土) 05:17:09.31 ID:j5y5N25I0

「A子、Bさんとこにコップ二つね。」
「はい。」
驚いて父さんを見る夫さんに向かって父さんは
「Bさん、久しぶりにゆっくりお二人で飲んでくださいよ。最初の一本はサービスにしますよ。」
と気を利かせた。
「すまないね・・・。」といいながら夫さんは最初に自分のコップに、その後向かいの席に置いたもう一つのコップにビールを注ぎ、軽くコップを合わせた後
ゆっくりと飲みだした。
何本か瓶を空けた後、「ちょっとトイレ。」と言って夫さんは席を立った。
楽しそうに飲んでいるその空気のせいか、娘さんにちょっとしたいたずら心がわいた。

624 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/09(土) 05:24:42.82 ID:sRxmbPPi0

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