Categories: 洒落怖

鳩か子か

この怖い話は約 3 分で読めます。

783 鳩か子か1/2 ◆BxZntdZHxQ sage New! 2008/05/07(水) 00:14:22 ID:fcHZQV3T0
霊感って血筋と関係あるんだろうか。
俺の父方の方ではそんな話は聞かないが、母方には見たり感じたりの人間がいる。
俺は気配だけ感じる事があり、ごく稀に怪しいものが見える事もある。
俺は見ていない話を、ふたつ。

今はもう走っていない列車で出掛けたのだから、三年前かその前の年だろう。
母方のいとこ達で、五月の連休に揃って旅に出た事がある。
元々母の姉妹の嫁ぎ先が近県に固まっており、人寄せやら親族旅行が多い。
上はそこそこの年齢だから、つるまなくなる方が普通かも知れないが、
逆に近頃はいとこ会よろしく、子供だけで出歩く機会を設けるようになった。
その年は六人全員集合、ある有名な神社へ行った。

大きな鳥居を潜り、砂利の敷かれた長い参道。
一番年上の亜矢ねえと、俺と同い年の美保が先頭を行き、少し遅れて一番若い桜、
その後に彼女の兄の郁、亜矢ねえの弟の智宏、そして俺が歩いていた。
最後尾にいた俺が、いつもフラフラしてそそっかしい智宏の、
例によってよそ見をしているのに付き合ってあーだーこーだ言っていると、
先に行った従姉たちが声高に話し始めるのが聞こえた。
見れば拝殿の手前に三段程ある石段を上がった所で立ち止まり、
二人が郁と桜に何事か説明している様だ。
慌てて追い付いてみると、彼女達はそれぞれが見たものを話してくれた。
それを統合すると、多分こんな事が起こっていたのだろう。

784 鳩か子か2/2 ◆BxZntdZHxQ sage New! 2008/05/07(水) 00:15:08 ID:fcHZQV3T0
亜矢ねえが先頭で、美保が二歩程後ろを歩いていた。
足取り軽く石段を上がろうとした亜矢ねえだったが、目の前を鳩が横切る。
八幡様のお膝元で育った、彼女は何の疑問も持たずに出した足をすっと引っ込めた。
鳩を脅かさず、通り過ぎるのを待った。
しかし、斜め後ろにいた美保はその時、どこからともなく現れた小さな子供が、
石段を横にとことこと歩いて行くのを見ていた。
子供が来るのを見たから、亜矢ねえもぶつからない様に立ち止まったと思ったそうだ。

だが、亜矢ねえが足を引っ込めた途端、鳩は姿を消してしまった。
同時に、美保の見ていた子供も見えなくなった。
二人は顔を見合わせ、全く同じタイミングで互いに見たものを口にした。
「今私の足元に白い鳩が通ったよね。」
「今お姉ちゃんの前に子供いたよね。」
それをすぐ後にいた桜が聞いていたのだが…。
「何にもない所で立ち止まったから、どうしたのかなって思って。」
更に後ろにいた郁に確認したが、彼も何も見ていないらしい。
因みにこの時は勿論、俺が別口で同じ場所に行った時も、境内に鳩は一羽もいなかった。
そして、観光客は俺達の他は年輩のグループが一組いただけで、
子供がいる家族連れなどは見当たらなかった。
鳩も子も、どちらもいた筈がない。

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