この怖い話は約 2 分で読めます。

180 名前:こんなの 投稿日:2000/10/06(金) 19:04
俺が中学二年のときの話。
体育祭の日の朝、体操着を着て弁当の入った袋を提げて、
きげんよく通学路を学校へ向かっていた。
途中に、住宅街には似つかわしくない白壁の土蔵が一軒建ってる。

入口は、道路がわからは見えない中庭に面していて、
白壁のずっと上のほうに明かり取りの小さな窓が一つあるだけ。
何気なくその窓を見上げると、無表情な男が中から道路を見下ろしていて、
俺と視線が合った。
変だなと思ったのは、ふつう人間が知らない人とうっかり視線が合ってしまったら、
反射的に目をそらすか、人によっては微笑むか睨みつけるかするだろうと思うのだけれど、
その人はまったくの無表情で、じっと俺の目を見つめ続けていたのだ。
すごく色白で、きれいに頭を散髪した、30前後の男だった。
20秒ほど見つめ合っていた。やがて俺のほうから視線を逸らして、なにごともなく学校に着いた。
ふつう土蔵の明かり取りの窓の内側には、階段も何もない、ということを知ったのは、
ずっとあとの事だ。
もしも暗い夜道で同じことがあったら、たぶん悲鳴を上げて逃げ出していただろう。
そのていどの不気味さは、そのときも感じていた。
実際には、雲一つなくよく晴れた明るい朝で、人通りもないわけではなかった。
だからそのまま登校したのだ。
しかしいま思い出すと、明るい街並みとあの無表情な顔との対比に、かえって寒々しさを感じてしまう。

bronco

Share
Published by
bronco

Recent Posts

ブライダルフェア

いや、たいして怖くないんだけど…

4年 ago

教祖の妻の肖像画

親が昔、へんな宗教にはまってた…

4年 ago

The Body

10年くらい前の話だけど・・・…

4年 ago

謎の曲

出所が分からない所からの楽曲ダ…

4年 ago

エレベーターで見たもの

じゃあ俺が生涯で一番ビビった話…

4年 ago

強烈な遺体

久しぶりに民話でなく現代の話を…

4年 ago