後味の悪い話
絵本『ぼくたべないよ』

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641 : 本当にあった怖い名無し : 2012/05/25(金) 01:49:16.17 ID:i/0vywI60
絵本『ぼくたべないよ』 1

森の皆から恐れられているライオンが怪我をして、狩ができなくなり、お腹はペコペコ。
でもなにより、誰もがライオンを恐れてお見舞いに来てくれない事が、ライオンには寂しくて寂しくて堪らなかった。
ある日、そんなライオンに可愛らしいカゴに入った苺のパイを差し入れてくれる”ともだち”が現れた。
毎日可愛らしいカゴに入ったパイと手紙を置いていく、姿を見せないともだち。
ライオンはパイを食べて元気になるにつれて、その顔も知らないともだちに、恩返しをしたくなる。

「そうだ、こんどはぼくがご馳走を作って、そのともだちにお礼をしよう」

642 : 本当にあった怖い名無し : 2012/05/25(金) 01:50:01.53 ID:i/0vywI60
『ぼくたべないよ』 2

元気になったライオンは特製のシチューを作ってともだちをもてなそうと考え、具材を狩に出かける。
そこで出会ったのがカモシカのおばさん。森の誰もが怖がるライオンを見ても、怖がらずに元気になった事を喜んでくれる。
おばさんはライオンににこやかに話をしながら何かをせっせと摘み、手にかけた可愛らしいカゴに入れている。
自分を怖がらないカモシカのおばさんに拍子抜けし、どうにも狩にくいと思うものの、
どうしても姿を見せないともだちにご馳走をしたいライオンは、カモシカのおばさんを殺してしまう。
カモシカの手からは可愛らしいカゴが吹き飛び、中からは摘みたての苺が飛び散った……

ライオンは自宅で特製のカモシカシチューを作り、ともだちがいつくるかとワクワクして待っている。
でも待てど暮らせどともだちは来やしない。そのうちライオンのお腹は減ってくる。すぐ横には美味しそうなシチューがたっぷり。
けどライオンはヨダレを垂らしながらも、ともだちが来るまで我慢します。ライオンは自宅の前に手紙を貼ります。

ーいつもおいしいパイをありがとう。
ぼくは森のけものをたべたりしない、
優しいライオンです。
あんしんして、ドアをノックしてください。
ぼくの作った、ご馳走がまってますー

ライオンは太陽に早くともだちが来ます様にとお祈りをする。けれどともだちが来やしない事を太陽は知っていた。
だって、今鍋でグツグツ煮えてるのが、優しい優しい、ともだちなんだから。

そして森からライオンはいなくなりました。真っ黒に焦げたシチュー鍋の横で、痩せこけて死んでいました。
森の皆は食いしん坊のライオンが美味しそうなシチューを目の前にしながら一口も手を付けずに死んだ事を不思議がり、
そして、あんなに恐ろしく思っていたライオンに、もう二度と会えないのかと思うと、無性に寂しくなりました

643 : 本当にあった怖い名無し : 2012/05/25(金) 01:54:55.43 ID:i/0vywI60
『ぼくたべないよ』を初めて読んだのは小学校低学年の頃。
後味が悪いというか、ライオンも優しくしてくれた”ともだち”に優しさを返してあげたかっただけなのに、救い様のない無情な物語に衝撃を受けた。

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