この怖い話は約 3 分で読めます。

部屋に入ると青ざめたYさんとKが待っていました。
僕は爺ちゃんに教えられた通り、部屋中の窓と玄関のドアノブに札を貼りました。
そして落ち着かないまま3人で時間を待ちました。

緊張していたせいか、時間がたつのはあっという間でした。
時計の針は1時55分を指していました。

「・・・!」

一番最初に異変気付いたのはYさんでした。

「来た!!」

震えながらYさんは自分のベッドに潜り込みました。

「・・・カッ、コッ、カッ、コッ・・・」

足音です。
同時に僕の背中に冷たい電流が走りました。
ものすごく嫌な感じがします。

「・・・カッ、コッ、カッ」

足音が部屋の前に止まりました。
そこで僕は重大なことに気が付きました。
なんと間抜けなことでしょう!
一番肝心なポストのフタに札を貼ってありません!
かといって今から貼る勇気はありません。
何かが投函されるのかと、僕とJはポストを凝視していました。

「コンコン、コンコン!」

しかし意表をついてポストではなく、ドアがノックされました。

「K○さ~ん、郵便で~す」

ドアの向こうからは張りの無い無機質な男の声がしました。

「K○さ~ん、郵便ですよ~」

ノックと声は続きます。
僕たちは声を潜めて様子を伺いました。

しばらくノックと声が続いた後、ふっと音が止みました。
そして

「カッ、コッ、カッ、コッ・・・」

足音が歩き出しました。
そしてそのまま小さくなり消えていったのです。
ほっとして僕らはその場にへたり込んでしまいました。
布団に潜っていたYさんも顔を出し、安堵で泣きじゃくっていました。

「ふう・・・」

僕はため息をつくと立ち上がりながら、なんとはなしに目をドアの方へ向けました。

「・・・!」

僕は恥ずかしながら腰を抜かしてしまいました。
僕のただならぬ様子にJとYさんもドアの方を向きました。

ドアのポスト。
フタが上がりギラギラした2つの目がこちらを睨みつけていました。

「なんだ・・・いるじゃないかよお」

先程とは打って変わって野太いしわがれ声が、部屋の中に向かって放たれました。

「ガンガンガン!ガンガンガン!」

激しくドアを殴りつける音!

「ガチャガチャ!」

ドアノブも、もげてしまいそうな勢いで激しく上下しています。
同時に部屋中の窓という窓がガタガタと音を立てて震えだしました。

「キャーーーーーーーーーーー!」

Yさんは悲鳴を上げると気を失ってしまいました。
僕とJはKさんの上に覆い被さったまま何もできずにいました。

どのくらいの時間が経ったでしょうか。
気が付くとあたりは明るくなってきていました。
音も止んでいました。

「・・・Yさん!」

僕とJは慌ててYさんを確認しましたが、Yさんは気を失っているだけで命に別状はなさそうでした。
あれほどの騒ぎにも関わらず、1階の大家さんも、隣の部屋の住人も、全く夜中のことは気付いていませんでした。
Yさんはその後そのアパートを引き払い、別の場所に引っ越しました。
その後は何もないようです。

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