Categories: 何でも怖い

井守と蛙

この怖い話は約 3 分で読めます。

503 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/09(土) 16:14:22.28 ID:K12mg2qN0
怖くはないのですが不思議な体験をしたので投稿します。

もうだいぶ前のことになりますが、当時私は金属加工の小さな工場を経営していて
折からの不況もあってその経営に行き詰まっていました。
そしてお恥ずかしい話ですが自殺を考えたのです。

もう子供たちは成人しておりましたし、負債は生命保険で何とかできると思われる額でした。
今にして思えば何とでも道はあったのですが、精神的に追い詰められるとはあのことでしょう。
その時はそれしか考えられなくなっていました。

五月の連休の期間に家族には告げずに郷里に帰りました。
郷里といってももう実家は存在していなかったのですが、
自分が子供の頃に遊んだ山河は残っていました。

この帰郷の目的は、裏山にある古い神社にこれから死にますという報告をしようと思ったことです。
昔檀家だった寺もあったのですが、住職やその家族に会って現況をあれこれ聞かれるのが嫌で
そこに行くことは考えませんでした。

504 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/09(土) 16:14:44.25 ID:K12mg2qN0

神社に行くまで少し坂を上りますので、鳥居をくぐったときにはだいぶ汗ばんでいました。
この神社は村の氏神のようなものですが、過疎化の進んだ昨今は常駐する神主もおりません。
例祭のとき以外にはめったにお参りする人もいないような所です。
大きな石に山水をひいた手水鉢で手を清めようとしてふとその底をのぞき込んだときに、
くらくらと目眩がして、水に頭から突っ込んでしまいました。

深さは五十センチ程度だったと思うのですが、
私の体はストーンとそのまま手水鉢の中に落ち込んでしまいました。
そしてかなりの高さを落ちていった気がします。
ばしゃっと音をたてて井戸の底のような所に落ち込みました。ショックはあったのですが
そのわりには体に痛いところはありませんでした。

そこはおかしな空間で、半径1.5mほどの茶筒の底のようで1mくらい水が溜まった中に
私は立っています。回りの壁は平らでつるつるしていて、
しかも真珠のような色と光沢で内部から光っているのです。
一番不思議なのは、真上10mくらいのところに手水鉢と思われる穴があり水がゆらるらと
ゆらいで見えることです。しかし私自身の顔は空気中にあり、下半身は水の中にいるのです。

505 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/09(土) 16:15:11.66 ID:K12mg2qN0

私が浸かっている水はまったく濁りがなく透明で、さして冷たくはありません。底の方を見ていると
足元に20cmばかりの井守がいるのに気づきました。それだけではありません。
井守は一匹の小さな青蛙を足の方から半分ほどくわえ込んでいます。
蛙はまだ生きていて逃れようと手をばたつかせますがどうにもなりません。
その状態が長い時間続いているようです。

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