この怖い話は約 3 分で読めます。

836 リツコ 1/3 sage New! 2008/01/19(土) 14:06:45 ID:xhv0ELmu0
俺、小さい頃の記憶ってほとんど残ってないんだけど、
ひとつだけものすごく鮮明に思い出せるのがある。
幼稚園の頃、俺は幽霊の女の子と遊んでた。
その子は確か名前はリツコ。
はじめて会ったのは、当時住んでた団地の裏手に広がってた
芝生の空き地で一人で遊んでたときだった。
俺は彼女と出会い、しばらく一緒に遊んだ後、リツコは
自分が幽霊であることを俺に明かした。
自分から正体を明かすなんて今思うとかなり珍しい種の幽霊だったと思う。
リツコは至極真剣な顔だったから、俺は彼女が嘘をついているようには
見えなかった。実際よく見たら足がない。本物だと思った。
だけど怖くはなかった。リツコと遊んでいると本当に楽しくて
いつも気がついたら夜だった。時間を忘れるって
まさにこのことなんだと子どもながらにひしひしと感じていた。

837 リツコ 2/3 sage New! 2008/01/19(土) 14:08:02 ID:xhv0ELmu0
別に自分はリツコに呪われているふうでもなかったし、
取り憑かれてるつかれてるふうでもなかったから、
単なるちょっと違った種の友達として、
毎日のように遊んでいた。
親や友達には秘密。何故か秘密にすべきだと感じてたから。

たぶん幼稚園の年長の終わりごろだったと思う。
ある日俺がいつものように芝生の空き地に行って、夜まで遊んで、
じゃあ帰るね、と言ったところで、いつもはじゃあね、と見送ってくれる
リツコが俺を引き止めた。怪訝な顔をする俺に、リツコは確かにこう言った。
「○○くん(俺)は、しんじゃだめだよ」
その言葉が意味するところはそのときの俺にはわからなかったから、
とりあえずうん、と答えておいて、俺は芝生の空き地をあとにした。
それ以来、もう俺はリツコと会っていない。
消えてしまったのだ。跡形もなく。
そしてちょうどその頃俺は引っ越すことになって、
芝生の空き地から遠ざかった。
けど、今でも、一時もリツコのことは忘れたことがない。

838 リツコ 3/3 sage New! 2008/01/19(土) 14:09:01 ID:xhv0ELmu0
でね、俺いま鬱病なんだ。
いや、正しくは医者がそう判断しただけなんだけど。
だって鬱病にかかるような原因がちっとも思いつかないんだ。
別にいじめられてるわけでもないし、家族はみんな仲いいし、
正直俺のんきだからストレスなんてあんまり感じないタイプだし。
でもね、何故かよくわからないんだけど、何をしても楽しくないんだ。
あんなに好きだったパソコンもアニメも全然楽しくない。
すでに楽しいっていう感情さえ忘れかけてるような気がするくらい。
もちろん何度か自殺は図ったよ。
でも、何故か毎回助かっちゃう。
絶対死ぬだろうっていうようなやつでも、どうしても助かっちゃう。
楽しくないと思うたび、
自殺を図っても助かってしまうたび、
俺はリツコのことを思い出す。

Page: 1 2

bronco

Share
Published by
bronco

Recent Posts

ブライダルフェア

いや、たいして怖くないんだけど…

4年 ago

教祖の妻の肖像画

親が昔、へんな宗教にはまってた…

4年 ago

The Body

10年くらい前の話だけど・・・…

4年 ago

謎の曲

出所が分からない所からの楽曲ダ…

4年 ago

エレベーターで見たもの

じゃあ俺が生涯で一番ビビった話…

4年 ago

強烈な遺体

久しぶりに民話でなく現代の話を…

4年 ago